貴女がいた日常 | ナノ


▼ 終わりまでの始まり


ひさしく、この場所から離れていた。
そして、ここを訪れるのは、忍としてでなく、お館様から許可を得て一武将として…

それだけじゃない。
この戦のためだけに与えられた、新しい槍。

たかが忍が持てるようなものではない。

お館様はいい笑顔で私へ贈ってくださったけど




「まさか、戦に出るとは聞いていたが…」

『ふふ、こういうのもいいとは思わない?』




己の身に緋色の衣を纏わせて、もう忍とは言えない格好をして
私の最期の仕事だから、と、そんな思いでここに来たのだから


シュタリと、現れて、そして言ったのは見知った顔で
笑ってしまう。




「幸村様は、初陣で…」

『私も武将としては初陣よ、
 これが、最期のつもり。』



彼の前に現れるのは、と続ければ、ただ静かに眉を寄せた鎌ノ助
また、笑う。



『さ、鎌ノ助、
 お館様のもとに案内してもらってもいいかしら。』

「…あぁ」



武将としての私は今回で最初で最後。
だから、



『さぁって、元気かしらね、弁丸は』





もうずっとあっていない弟

話せは、しないけど





執筆日 20131029


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