貴女がいた日常 | ナノ


▼ キミがため


『…』



羽織を握りしめながら空を見上げる。
だいぶ、温かくなったと感じるけれど…それはおそらく私の体温が低くなってきているからだろう。

おそらくは…もう間に合わない…



『いるんでしょう、佐助』



わかりきってた。
自分の体だもの…終わりがもうすぐなことぐらい、わかる。


背後へと声をかければ、しゅたりとそこに降りてくる夕日色
振り返れば、瞳を揺るがせて私を見ていた。



「朱音さん…っ」



それから、小さな声で私を呼んだ。
けれど、あえて微笑んで、また前を見つめる。



『佐助、君にはまだ荷が重いかもしれないけど…










 真田十勇士をあなたに託します、』

「っ!」



後ろで、息をのむ音が聞こえた。
私が酷い選択をしたのは自覚しているつもりではある。

でも、才蔵は認めるには幸村に甘いし、鎌ノ助は何かが違う。

もともと、この子にするって決めていたから




「っ俺、は」

『時間はないの。』

「ねぇ、朱音さん…っ幸村様には…っ」

『言わないわ、
 いっても意味がないからね』

「幸村様は…ずっと!」

『待っているって?
 血は繋がっていないのよ?今まで私はずっと幸村をだましていたのよ?



 なのに、













 待っているわけ、ないじゃない。』




今までの私は全部偽物だった。
小さく咳き込んで、また衣を手繰り寄せる。



『用はそれだけよ、』

「でもっ」

『君は私の言うことを聞いてればいい』




もう、終わるの、


だから、





もう、何もいらない



執筆日 20131017


prev / next

[ ((]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -