▼ 時とは常に早いもの
上田城に帰ってきてからはひどく平和な日々で…
夢のようだと思ってしまった
『もう、弁丸じゃなくなるのね』
けれど、ふっとおもいだして思わず口に出した。
そうすればきょとんっと団子を口にくわえたままの弁丸が顔を上げた
「弁丸は弁丸のままだ!」
それからにぱっと笑って言うけれど、名を改めれば父上様やこの子のお兄さんのようにお館様に仕えるのだろう…
元服すれば、一兵とただの忍
私は表立ってるけど…でも忍なのは変わらない
『違うわ、子供じゃなくなるんだもの』
それは、本当に別れでもあるのかもしれない。
私だって、そろそろいろいろ考えなくちゃいけないのだから…。
今度こそ、本当に…
「あ、姉上。」
『ん?なぁに?』
「っもし、もし…
姉上がよいというのならば」
そう思って、話し出そうと思えば、先に口を開いたのは弁丸で…
何かと思えば、口ごもり…
けれど
血のにおい…
『っ!!』
「うっ」
弁丸を引き寄せて一気に部屋の隅に転がる。
瞬間、たくさんのクナイが障子を破って
弁丸がいた場所に、突き刺さった。
「あね、うえ…っ」
ぎゅぅっと着物が握られる
弁丸の声も震えている
『っ由利』
そんな、もうすぐ抜かれてしまうであろうその体を抱きしめて守りながら天井へと叫べば一気にたくさんの気配が抜けていった
これは、奇襲だ。
「弁丸様!朱音さん!」
スパンっとぼろぼろの障子を壊す勢いで開き駆け込んできた佐助。
その佐助の姿もぼろぼろで…
『佐助、絶対に弁丸を守りなさい』
「っえ、」
『弁丸、絶対に佐助から離れちゃだめよ』
「いやだ!姉上、行ってはっ」
これは、問題だ、
私のせいだ
だから…
『絶対に、死なないから…』
私は、君を守るために
執筆日 20130916
prev / next