▼ 願い
*-*Side Benmaru*-*
「姉上…佐助…」
部屋の隅で、体を丸めて小さく名を呼ぶ。
けれど、だれも答えてくれやしない…
独りぼっち、
ひどく心細い…
あのころに戻ったみたいだ。
「っ姉上・・姉上…っ」
貴女を失ったら、俺はどうしたらいい。
こんなにも弱いのに…
考えられない、姉上がいない日なんて…
ぎゅぅっと体を抱きしめて震える。
あぁ、こんなにも、寒い…
『隠れるの、下手になったのね』
「っ!」
けれど、音もなく代わりに降り立ったのは俺の、求めていた声
はっと顔を上げれば微笑んでいる人…
「あ、あね、うえ…?」
声が震えた。
なのにその人は変わらず「あら、私以外にだれかいるかしら?」と笑っている。
手を伸ばせば、それにこたえて優しく手が握られた。
ひんやりしていて…気持ちがいい…。
あぁ…姉上の手だ…
「っおそい…」
『うん、ごめんね。』
「っ佐助も、いなくて…」
『うん…』
「独りに・・なってしまったかと…!」
その手をほどかずに、姉上に飛びついた。
息を吸い込めば、姉上のにおいが広がる。
あぁ、帰ってきた、姉上が帰ってきた…っ
『いい、弁丸。
人はいずれ死ぬのよ』
「っ姉上に限ってそんな…」
なのに、そんなことをいう。
確かに、普通のおなごと違い、戦に出ている姉上は多く死の直面に立たされるだろう。
そんなの、そんなの…
嫌だ…
「(早く、姉上を守れる男になりたい…っ)」
抱き付いたその体は、ひどく細いのに
執筆日 20130913
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