▼ 君の価値
*-*Side Sasuke*-*
目の前に黒が見えて、思わず飛びついた。
おそらく、気が付いていたんだろう。
身体を震わせることもなく、俺様に好きにさせているんだから…
『どうしたの、佐助。』
けれど、ふっとかけられた声に思わず体を震わせたのは俺様で。
くすくすと微笑む朱音さんの首元に顔をうずめた
「弁丸、様が…」
『うん。』
「俺様のこと、いらないって…」
「お前は知ってるんだろ!! なぜ俺に言わない!!
姉上の言うことしか聞かない忍びなんて俺はいらない!!」
あぁ、知ってる。
でもこれはこの人との約束だからどんなことを言われたって、たとえこの人が俺様に託した主だからって…話すわけにはいかないって…
『…そう…弁丸は悪い子ね…』
「ねぇ、もう駄目だよ…っ
俺様に、あの子は明るすぎるんだ…っ」
でも、一番は俺様の心なんだ。
なによりも明るい…大きな明かりが俺様には眩しすぎる。
今までずっとずっと暗い世界にいた俺様には、ひどく…
「まぶしくて…っ!」
吐き出した本音に、わずかに朱音さんが身じろいだ。
それから、するりっと俺様の腕を抜けてそっと向かい合わせになり、手を広げられる。
『おいで、』
「ッ…」
ただ一言、
まるで慈母のように笑みながらいうものだから質が悪い。
恐る恐る、手を伸ばせば、優しくその手に普通よりも冷たい手が触れて、そして抱きしめられた。
あぁ、薬のにおいがする…。
『あの子は、眩しいでしょうね。
でも、それは佐助の心の闇を照らすためよ。
たとえ闇の力を持っていたって、あの子の傍に居ればいやされる。
私も氷だけれど、あの子の温かさは好きだもの。』
「朱音さん…っ」
『近々、帰るわ。
あの子が私に依存しないように。』
なのに、あぁ、なんてこの人はひどいんだろう
『だから、佐助。
私の価値を、君に上げる。
私は真田十勇士の長で、あの子の家族。
それも、全部あげるから…』
どうかあの子を見捨てないでね
なんて、微笑むのに…
「っ朱音さんだって、弁丸様を捨てないでください」
貴女は自分の価値をわかっていないから
執筆日 20130910
prev / next