貴女がいた日常 | ナノ


▼ 玩具



『は…は…』



息が切れる。
ただ、ただ苦しい。

忍びとしては、もう、私の体はおそらく使い物にならないだろう。


あれだけ修行をして呼吸を悟られないように、訓練したのに、こんなにも…



「朱音様、少しお休みになられたほうが、」

『才蔵、少し黙れ。
 すぐに伊達の傾向を探りなさい。』

「…っ御意に。」



部下の一人である、霧隠才蔵に言われたがいつも佐助に言われていることを言われて多少苛立ちそういってしまった。
かれこれ、弁丸に会わなくなって2週間になる。

こんなにも離れたことはない。

だから、だろうか…



『っげほ…う、ぐ…っ』



咳き込み、あぁ…もうだめだと…
畳に散る赤に目を細める。

乱雑に口を拭って立ち上がった。



「どこに行くつもりだ」

『どいて、由利。
 お館様のところに行くの。』

「そこで真田に戻るといえばいいものの、お前いつか壊れるぞ」

『まぁ、安心してよ




 もう壊れてる。』
 


由利鎌之助。
この男だって私の部下であり、友だ。

同じ里出身で、まさか武田に仕えてるとは思わなかったが…

でも、こうしてまたともに戦えることがうれしくあった。


由利は、私が氷の婆娑羅によって命を削られることを知ってる、
でも、この力は守るためのもの。



『忍は、道具よ。』

「それはお前が撤廃した俺たちには必要ない掟だ。」

『えぇ、そうね。
 だけど…私はどうせ死ぬの。』



だれも逆らえないこの世界の理。



『人間はどうせ神様の玩具よ。
 壊れたら捨てられる道具なの。



 それが早いか遅いだけ。


 私は簡単に壊れちゃう玩具だったのよ』

「朱音…お前…」

『お願い。この体壊れるまで…っあの子が元服できるまで…その時まで私は…戦わなくちゃいけないの…!』



それを理解しているからこそ、私は今の時を精一杯生きてあの子のためにしてあげたい。
すべて、あの子のためなの…



「…なら、お前は指示だけ出せ。」

『っ!』

「真田の屋敷に帰らないというのであれば、俺はお前の手足になろう。
 お館様の伝令もすべて俺が受け持つ。

 だから、お前は部屋から出るな。
 なるべく、寝ていろ。」

『心配性な由利、昔と変わらないわね、』

「何とでも言え。」


そのために、この身をやいて。
そして駆ける。


壊れるまで

執筆日 20130909


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