貴女がいた日常 | ナノ


▼ ひとり

*-*Side Benmaru*-*


「姉上…」



小さくつぶやいても、誰も来てくれない。
あの日…

道場でただ手合わせをしただけなのに…最後に感じたのは…今までとは違う…殺気。

俺が今まで周りから見られていた目。



姉上が酷く恐ろしく…感じてしまった。



姉上は…戦に出る武人だ。
故に、姉上の分の戦力を…それ以上のものを俺が手にできれば姉上は戦に出なくてもいいと…

甘い、考えだったのだろうか



「弁丸様」

「佐助…」

「はい、お八つの団子だよ。」



今まで姉上がやっていた仕事を、佐助がやってて…

だが、佐助は姉上にしか心を開いていない、
だから…俺と話すときは、いつも仮面をかぶっていて…


ひどく、心細い。



「いらぬ」

「え?」

「っ姉上が用意したものしか食わぬ!!」




限界、だった。

どんなに甘味が好きだろうが、いつも横で姉上と笑いあいながら食べるのがすきなのだ
なのに…その姉上はいない。



「弁丸様…」

「っ姉上は俺のことが嫌いになったのか!
 弱いから、来てくれないのか!」



いつからいないのだろう。
また、父上とともに武田信玄のもとにでも行ってしまったのだろうか。

また、血のにおいを漂わせているのか、…



「お前は知ってるんだろ!! なぜ俺に言わない!!
 姉上の言うことしか聞かない忍びなんて俺はいらない!!」



叫んで、はっとする。

がしゃんっと湯呑の割れる音がして顔を上げれば困ったように眉を下げた佐助がいて、

名を呼ぼうとしたら「失礼します」とただそういって消えた。



伸ばした手は、何もつかめない。



「っ…」



何が変わった、何を…




何を間違えた…っ




執筆日 20130908


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