***Side Yukimura***

背に楯無の鎧を背負い馬を走らせ、片倉殿の後をおう。
目的地はもうすぐだ。

片倉殿は何よりも政宗殿を信じている。その逆もししかり。
某と佐助のようなそんな従者関係でありながらやはりたくさんの大切なものを背負っているその背なかは某とは違う。


長篠の戦いで少しばかり近くなった伊達との距離。お館様のそれは誰をも救おうとするお心の広さ。
伊達は関東の軍とはどことも同盟を結んですらいない。
それでも…そんな伊達でも、お館様は受け入れた。

だからこそ、某も…



しばらく走らせていれば見えた大仏殿に馬を止める。
そして、その背から降りれば佐助は懐から馬の餌をとり出し与えながら「馬づかいの荒さも半端じゃないねぇ…」と撫でていた。

佐助はよく「忍び使いが荒い」というが、それを今言われてもどうしようもない。

助ける、ためなのだ。

馬の背から荷を下ろし改めて背負う。そして二槍を手に握り、感触を確かめた



「旦那?」

「長旅ご苦労。ゆっくり休んでいてくれ」

「楯無の鎧は無事かい?」



そんな某に、佐助が言う。
確かに持ち上げるときにごとりと箱の中から音がしたが、何の心配もいらぬ。
そう佐助にも返し、身を返して入口を見る。

先に単身乗り込んだ片倉殿は、おそらくこの先にいるだろう。



「片倉殿…無事でいてくだされ。」



ぽつりとつぶやいた言葉は、彼女の心だ。
誰よりも片倉殿のことを政宗殿は信頼し必要としているのだ。

貴方がここで朽ちることはなかれど、もしも怪我なぞして帰れば政宗殿はひどく悲しむだろう
あの方が悲しむのは、正直解せぬ。

そう思いながら足を進めていけば、不穏な空気。もしやと思えば、転がっていたのは、3人。

紫色の煙が漂い、さっそく穏やかではない。



「これは…」

「あれは三好の三人衆…竜の右目に姑息な手は通じなかったってことだな…」


つぶやき、手の甲で口元を抑える。
佐助もにおいをかぎ、口を押えているから正しい判断だったんだろう。



「身代の品を携えやってきたものを、討たんとするとは……」

「少なからず毒を吸わされてる松永とことに及んだら不利だ。」



「行くぞ、旦那。」と某に視線を移して、佐助は立ち上がった。
ひとつ頷いてこの先にある長い階段…おそらく本堂に長るであろうその通路に視線を移した。

この先に、おそらく片倉殿がいる。
そして松永久秀…その男もだ…



20160905

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