青葉城を出発してかれこれ数日。
爆走といえばいいのだろうか、休憩以外はずっとスピードを上げて走らせる
先頭を私が走り、斜め右をほぼ並走するのが小十郎。
「独眼竜!」
前だけを見据えていれば後ろから前田の声が聞こえて、そしてそばまで走ってきた。
『なんだよ、色男。』
振り向かずに、ただ視線だけを向けた。
そうすれば、少し考えていたらしいが
「今頃、上杉の軍勢が信濃を抜けて甲斐へ向かっているはずだ。」
『俺に邪魔された戦の続きでもしようってことかい?』
「違うって!
上杉は武田と合流して尾張へ攻め込むんだ。
「俺たち」を先鋒にして!」
そういった。
一瞬、小十郎からただならぬ殺気らしきものを感じたが…それを感じ取るのは前田もそうだ。
まあ、私が標的にならないのならばそれでいい。
「悪くおもわないでくれ。
でも、あんた俺がけしかけなくても…」
『そんなことはどうでもいい。
小十郎がとっくに気が付いていたんだし。』
「え」
『俺の邪魔だけは誰にもさせない。
たとえ百万の軍勢が後ろから追ってきたとしても…魔王をおとすのはこの俺だ。』
くつくつ、笑いながらそういえばきょとんっとした声が聞こえたが、はっきりとそう宣言をして、また前を見据えた。
風が体を滑ってかけていく。
だが、私が目指しているのは、ただ一つ。
『そのまま、一気に天下を取る。
そうなったら、一番に取るのは背後に迫った武田と上杉だな。』
武田、
あぁ、武田か…
ふわりと巻き起こる耳元で燃える炎の揺らめき
熱気が体をつつみ温かくなる感じ・・・
『あいつとの戦いは…最後まで取っておきたかったんだけどな』
これは、私がこの世界に順応してきているからか、
それとも別の理由でか、
執筆日 20130828