刀を振り上げ水滴を振り払い構えれば私のいらだちを受けたのか、はぁっとため息をついた前田と、あわてて前田の装束の中に逃げこんだ夢吉。

それから肩を竦めれば「俺はあんたとやりあいに来たんじゃねぇんだよなぁ」とあきれたように言って



「喧嘩なら、太平になった花街でいくらでも相手になるぜ。」

『Shut Up!』



それから、そういうから…思いっきり怒鳴りつけてやって雨に濡れた地を蹴る。
水しぶきが上がり、多少滑るがあまり問題ではない

下から上へと刀を振り上げれば前田の持っていた傘を飛ばす。

ふわりととんだ傘は、地に落ちると同時に半分に割れた。



…外したか…


すっと、構えぬまま前田を見据えれば「わかったよ、独眼竜」と返事。
それから長刀を構えたが、それはさやから抜かれていない。

抜身の刀で…私と闘うっていうことか…



『その決断、後悔するぜ?』

「すごい技の使い手なんだろう?
 抜かないくらいがちょうどいいと思ってさ」

『あんまり私を怒らせないほうがいいぜ?」

「まだ怒ってなかったのかい?!」



一応、忠告はしてやったんだけどな、
だがきこうとしねぇし…


ちょっといらっとしたから、もう容赦はしない。



『小十郎。』

「承知しております。




 …ご存分に。」



小十郎の名を呼べば、しっかりと許可は取れた。
ただ、多少考えることがあるらしくその声は少し硬かったが


だんだんと雨が強くなっていく。
だが、そんなのは関係ない。


刀を構えることもなく、走る



『はぁ!!』



そして飛び上がり、前田の頭めがけて刀を振り下ろす。
わかりすぎる軌道。

だがそんなの関係ない。


超刀でふさがれて、はじかれる。
後ろに飛ばされたがしゃがみそして逆に超刀が振り下ろされる。



『(重い…っ)』



明らかな体格差、
手がしびれるかと思ったが、そんなの言ってはいられない。

若干笑みを浮かべる前田を思いっきりにらんだ。



はじき、そして再び重なる刃は火花を上げる。




「あんたは築き始めてる。

 だけど、築いていないやつもいる!


 人が幸せになってこその天下だろ!

 戦場で血を流して死ぬより、好きな人に看取られたいと思わないのか!?」



そして、言われた。

築き始めてる。

あぁ、そうさ。



その代り、私はこの手で父親と弟と大切な重臣を仲間を殺してきた。
私の判断ミスで、たくさんの人間を殺した。

上に立つ人間の、大きな責任をこいつはしらない。



「俺は、利とまつ姉ちゃんが悲しんでる姿だけは…







 絶対に見たくねぇんだ!」



鞘から抜かれる刃。

そして振り上げられ、対するように刀を当てる。



「あんたにとっちゃ、小さなことかも知れないが…

 天下取りっていうのは、みんなが恋して喧嘩して、笑って泣いて、楽しく暮らせる。


 そんな未来のために」



ガッと、刀を思いっきりはじいた。
なにもわかってない。

こいつは、すきでみんなが戦をしていると思っているのか。

あぁ、そうだな。




私は世には東北の残虐な竜とさえ呼ばれているさ。
だが、私は平和な世界を、未来を知っている。


だから、少しでも民が豊かになればとしっかりとやっているつもりなんだ。



幾度か刀を打ちあい、そして横に振り切られたとき、宙へと思いっきりとんだ。





四方に飛んでいる刀は力を宿し、そしてあつまればいつものように6本の爪を手にして天より下る竜。








地より放たれた雷は、天へと上りて空を照。




執筆日 20130826

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