「泣いているのかい、麒麟君。」
四国を攻め落とし、
そいて大阪城へ帰還する途中で倒れて死んだように眠ってしまった彼女
おそらく、遠目に見えたあの黒い炎の婆娑羅はかなり体に負担がかかるんだろう。
けれど、驚いたのは彼女がもう眠りについて数日が経過しているということだ。
様子を見に来れば軍医の歩君がいて…
怪我の具合を教えてくれたが、実際に会ってみて、これは精神的に危ないのかもしれないと思った。
歩君を退室させて、眠る彼女の側に座り、そっと頬を伝う涙をぬぐった
けれど、その涙は止まることなく流れ続ける。
「何の、夢を見ているんだい、」
おそらく、彼女はだんだんと壊れていっている。
なによりも…それは彼女があらわしている。
元々の…彼女が…
「僕が、闇の婆娑羅者だから…だね…」
君にまとわりつく、その闇
おそらく、あの天女がかけた…大谷君が言っていた呪いだろう。
初めて会った時よりもその闇はどんどんと彼女をむしばんでいく…。
でも、僕にはどうすることもできない。
無力だからね、僕は君を助けることはできない。
「早く、目を覚まそうか
それが君の役目だよ、秀吉のためにあの刃をふるうのがね…」
こんなことしか、僕は言えないんだ
執筆日 20130919