*-*Side Masamune*-*



「偽の軍勢を仕立てて俺をけしかけるとはなぁ
 豊臣も子供だましみてぇな手を使いやがる」



頭上を飛び交う鳥の影が地面を翔る
目の前にいるのは、川中島以来あっていなかった武田のおっさん。

俺とおっさんの後ろには巨大な穴が二つ。

これは先の激突でできたものだ。



「はじめは騙されておったようにも見えたがのぅ。
 その一刀を抜き放つ前に、いさめる右目の声でも聞こえたか」

「…」

「おそらくこれは布石、こちらの出方次第で豊臣は次に講ずる手を決する気なのだろう」



当たり前のように言うおっさんはやはりよめねぇ。
さすが上杉と長年やりあっているだけはあると思うが…



「わざわざ俺をアンタにぶつけさせたってことは」

「よもやかような手で武田と伊達を共倒れにできるとは思うておるまい
 我らが再び手を結ぶことを、望んでおるのかもしれん」

「どういうことだ」



だが、意味が分からねぇ。
なんでわざわざ不利になるようなことを望む。

俺と##NAME1##は…あの魔王を倒したってのに…



「一時にかたをつけたいのであろう
 圧倒的じんようをほこるきゃつらにしてみれば個別撃破よりも一網打尽が好都合

 豊臣にとって望むべきはかつての織田包囲網の再現なのかもしれぬ」

「テメェラはのんびり待つだけ敵をまとめて返り討ちにして天下統一か…
 ずいぶんと都合のいい話だな」

「しかしながら、そこにあえて乗る手もある」

「ん?」

「同盟したとてともに攻め上るとは限らんということじゃ
 独眼竜よ、貴様小田原をとってみぬか?」



手を顎に当てて、口元を釣り上げてそういう


武田のおっさんがいう 策。

俺たち伊達は小田原をとり、武田は宇都宮をとる。
そしてもとより手を組みやすい上杉に奥州を背にまもりそれを東を縦断する壁を作る。


やっぱくえねぇおっさんだ

それを逆手に敵を撃破する。
ここに小十郎がいれば、その策には乗ったかもしれねぇ

だが…



「俺の答えは、わかってんだよな。
 俺には、取り戻さなきゃならねぇものと、つけなきゃならねぇ落とし前がある。」




俺には、やらなくちゃならねぇことがある。
身をひるがえして歩きだす。

だが、やはりそこにあいつの姿はない。



「…幸はどうした。」

「…」

「武田のおっさん?」




思わず、その名を呼べばいつもはすぐに返してくるおっさんは返してこなかった。
足を止め、振り返れば難しい顔をしている。

さっき話していた時とは違う顔だ。



「あやつは、今行方不明よ。」

「What!? 今真田に帰ってんじゃ」

「真田は豊臣に襲われたようじゃ、あいつの母は今上杉におる。」

「…っ」



あぁ、なんでだよ…
あえると、








謝れると思ったのに


執筆日 20130918



戻る/しおり



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -