ぶわりと、黒が舞う。
目の前の男は目を見開き、炎の衝撃によって周りの兵たちが吹き飛ぶ。
『守るものなど…弱きものがすることよ。
私は強い、強くなければならない…
私は、私は…』
長剣に纏わせる黒の炎。
あぁ、けれど…ひどく落ち着いてて…
秀吉様も、守りたいものを捨ててあの力を得たのだ。
ならば、ならば…
『貴様は弱い、守るものなど、必要ないのだ。
必要なのは強さのみ、秀吉様の治める天下こそが最大の希望。』
「真田!」
『天女に魂を抜かれた鬼など…』
「!」
板を蹴り、そして前へ飛び出す。
懐に飛び込めば目を見開き、そのまま一歩前へとびだした
そして、長剣ではなく、拳を握り長曾我部の腹へと叩き込む。
伊達に、武田信玄と殴り合っていたわけではない。
あんな小さな標的飛ばすことなど簡単なことだ。
「兄貴!!」
吹き飛ばされた男はそのまま壁に叩き付け、その反動でパキパキと柱にひびが入る。
周りにいた長曾我部軍は悲鳴のような声を上げたが瓦礫とともに落ちてきた男はあまり動じていないようだ。
さすがと、言いたいが…
「今あいつらがどんな想いでアンタを探してるか、知らねぇんだ」
『…』
「独眼竜から文が届いた。
最近じゃあこの近辺を武田の忍が飛び回ってやがる。
アンタは、だれからも必要とされてんだ。」
口にすることが、どれだけ無意味かをこの男はおそらく理解していない。
必要ないから、私はあそこを出た。
いまさらだ。
いまさら過ぎて、反吐が出る。
『わたしは、もうもとにはもどれない。』
掲げるのは纏うのは、闇色の炎。
執筆日 20130914