カラカラ・・・



『沙紀殿・・?』
「誰かが来たようです。多分・・・霧隠でしょうね」


夜中、おおよそ丑三つ時。何かの乾いた音を聞いて、目を開けばすでに、懐刀を構えている沙紀殿の姿があり、意識がはっきりとする。けれど言われたその名に少し、悲しくなった。

佐助は、私の元に来てくれなかった。もう、私の事なんて・・・どうでもいいのかもしれない・・・。


「どうしますか?」
『・・・きっと迎えにございますゆえ。』


沙紀殿に言われて、すぐに表情を戻す。微笑んで、立ち上がった
すべては心配させないため。

「そう・・・荷は置いていって大丈夫ですよ、」
『沙紀殿・・・』
「ここは、貴女の家でもあるんですから。」

けれど、不安が伝わってしまったのか、そういわれて、苦笑い。
本当に甲斐の民は優しい。そう・・・お館様も・・


『ありがとう、沙紀殿。』


一言残して、歩き出す。寺の戸を開け、そして、外に出ればシュタっと私の前に現れる忍


『才蔵殿。どうかなされましたか?』
「お館様が3日後につくそうなので、ご報告に」
『・・あぁ、そうだな。戻ろう、あのおなごをどうにかせねばならぬ。』


もう、戻れない。
いいんだ。
もどれなくても・・・




執筆日 20130510



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