あぁ、やはり秀吉様は強いのだ、
どうしようもなく…届かない…
ただのこぶし一つで海を割り、そして堂々と水のなくなった地を歩いていく。
その後ろをただついていくだけで…
その背はあまりにも大きくて…
『(あぁ、私なんて届きやしない)』
でも、それでもいいのだ。
この方の少しの力にでもなれれば…
「麒麟。」
『はっ』
「四国の鬼を仕留めよ」
『仰せのままに』
名を呼ばれ、静かに返す。
幾度も放たれる大きな砲弾は周りの兵たちを吹き飛ばしその照準は秀吉様をとらえる。
前に出ようとしたけれど、その前に振り上げられた秀吉様の拳
ぴたりと足を止めれば、大量の砂煙が巻き上がった。
顔の前で腕を構え砂煙を防ぐ。
口当をしていてよかったと、心底思ってしまった
だが、同時に地を蹴り爆風に紛れて宙へと舞い上がる.
あぁ、まるで鳥になったようだと思う。
『(鳥、か…)』
まえにとりになりたいといっていたおとこがいたが…
私の思い違いか…
私が上からくると察知したのか、ギャーギャーうるさく鳴いた鳥。
それを無視して、抜刀し振りかざす。
鳥の鳴き声で気が付いたのか、顔を上げれば私を見て目を見開いていて碇槍を構えた。
『秀吉様の命により、
長曾我部元親、貴様の命を頂戴する。』
がきんっと鈍い音がして、下にいた長曾我部が目を見開く。
その片目にはしっかりと私が映っていて
「ってめ…真田…っ!!」
あぁ、そうか
この男は知らぬ
はじかれ、宙で回り、
そして着地する。
周りでどよめきが起こるが、私には関係ない。
「どういうつもりだ…てめぇは武田の…」
『何を言っているか、私には理解しがたいですが
豊臣軍、騎馬隊を纏めさせていただいておりまする、麒麟と、申します。』
死に踊りましょうか、長曾我部元親。
構えて、そして、言い放った
執筆日 20130909