*-*Side Kamanosuke*-*



ずるりと、目の前に闇が広がった瞬間背が凍るほどの恐怖を受けた。
まるで、何かに引きずり込まれるようなそんな錯覚にさえ陥る。

いつも幸様を守るように俺の前に立ち、武器を構えた清海


けれどその闇の中から現れたのは俺たちのよく知る、長の姿で…

一瞬は目を輝かせたがその眼はすぐに、絶望に濡れた。




「なん…で…」



そして紡がれた言葉に、あぁ…やっと…目を覚ましてくださった。

そう思ったけれど…もう、すべて遅い。




「幸様は、ここにはおりませぬぞ、長。」

「っなんで!!」

「もう、どこにもおりませぬ…っ」




貴方さえ、あの方のそばにいてあげれたら…
あの人はまだここで笑んでいたかもしれないのに…



「どういう…っこと…?」



幸様は皆に愛された。
愛されたが故に…



「かすが殿には、会いましたか?」

「かすが?」

「会うてすらおりませぬか。」



今、幸様の母君は上杉にいるというのに…
さきにこちらに来てしまうとは、また…

幸様との、約束。



もう、よろしいですな

貴女様は…ずっとひとりだった。


俺も…辛いのです。



「もう、幸様はこの世にはおりませぬ。」



絶望に、染まる瞳
「嘘だ」と口が動いた。

あぁ、信じたくはないだろう。

けれど、事実なんだ



かえられない…事実…


あの方は、もういない…どこにも…いない…



「変な、冗談だろ?」

「一緒にかすがが居りました。」

「誰が…っ」

「風の悪魔…風魔小太郎でございます。」



トサリと…膝から崩れ落ちた長。
小さく、驚いた。



いまだに、「嘘だ」と紡ぐ唇と、そして、





長の頬に流れた涙

あぁ、そうだ。



貴女も、あの方の前ではただの人ということ



執筆日 20130826



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