「麒麟様、お目をお覚ましになられましたか?」

『…』



ひどい、夢を見てしまった気がする。
ゆるりと目を開けば安心したように笑む蔵殿。

ゆるりと周りを見れば、薬湯やらなにやらのにおい。

おそらく…ここは宿屋




「ずっとうなされておりました、大丈夫ですか?」

『あぁ…あぁ、平気だ。』



ゆっくりと体を起こせばずきずきと頭が痛む。
額に手を当てれば、心配そうにもう一度名が呼ばれた。


あぁ、痛い…痛い…っ



『蔵、蔵…私はどれほど寝ていた。』

「時間にすれば半日でございます。
 今は昼時にございまする。」

『場所は…』

「丁度安土まで行く半分です」



目を閉じたまま、静かにつぶやくように言っても蔵は答えてくれる。
半分…そうか…半分…

ならば、急がなければ…



『心配をかけてすまぬ…すぐに出発する。』

「ですが…」

『疲れはない。 頭痛もすぐにやむ。 何も問題はない。』

「…でも」

『私の言うことが聞けぬなら帰ってもらって結構だ。』




口からすらすらと出てくる言葉。
考えもせずに、吐き出していく。


立ち上がれば、頭痛は不思議と収まった
あぁ、なんだただ寝不足だっただけかと…


部屋の片隅におかれている己が荷物に手を伸ばし、装束を整えていく。



「麒麟様…」

『なんだ。』

「…お気を、確かにお持ちください。
 呪いなんて、受け入れてはいけません。」

『…』




あぁ、そうか…







『痛みすら、なくなったというのか』



頭痛が収まったのは、ただ、感じなくなっただけだと…
けれど、痛みが感じないのであれば丁度いい。



『ならばこれからいくら傷つこうと躊躇なく動けるというものだな。』

「っ」

『心配するな。所詮私も忍びと同じ早速道具の身よ。』




だんだんと、冷めていく心が、ひどく…











心地いいと思ってしまった私は、





狂っているでしょうか?



執筆日 20130821



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