『伊達包囲網はどうなっておる。』

「光毅(みつき)や蔵(くら)の話によればすでに万全の同様。
 軍師を失った伊達は崩落も当然でしょう。」


竹中様や秀吉様がでる必要もないでしょうな、と言葉をつづけられた。
…あぁ、そうか…そこまでかの方は落ちてしまわれたか…


だが、今確かあそこには…




『(あの、天女がいたのであったな。)』



ならば、武田を責めてしまおう。
旧宇都宮・北条はすでに豊臣の手中。

そこまで行き、そのあとに押し寄せるならば…



『(もう、あまり片倉殿には会えないな。)』



私は、死んだことになっているのだから。
行方知れずの姫君。


なんて、そんな気はさらさらないのだけれど…



『(鎌ノ助殿…)』



なぜ、貴殿は某のなりをし、各地を回っておられるのですか?

あぁ、そんなことせずともいいのです。
あなたは空のように自由に歩んでゆけばいいのです。




『鎌ノ助…』









「!?」


「どうされました、幸様。」

「い、いえ…誰かに名を呼ばれた気がしたゆえに」




ふっと聞こえた声に、。思わず後ろを振り返った。
今、確かにあの方の声が聞こえた。

…俺の…聞き間違いだろう。…


あの方は…俺を守って…死んだのだ…。




俺の…目の前で…



視線を下に向ける。



俺は、あの方の影武者だ。
あの方は…きっと武田が繁栄することを…安泰の道をたどれることを、おそらく望んでいるだろう。
それを…俺はかなえて差し上げたい。



「清海、伊三から何かきいておるか?」

「昨晩届いたふみによれば…申し上げずらいのですが…」

「いい、申せ。」

「…母君のいらっしゃる真田の城が、何者かによって襲撃を受け全焼
 母君は無事に今は上杉に身を隠しているとか。」

「…」



あぁ、けれど…

なぜ世界は幸様を消そうとするのか…
俺には相当理解できない。

けれど、どうか…




もう一度、あなたにあいたい



執筆日 20130816





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