*-*Side Kojyuro*-*


目の前にいるのは、あの川中島では一度も見なかった政宗様が好敵手…真田幸
確かに俺はあの夜、こいつを見ていて…

里帰りをする…という言葉を最後に、あえなくなった。その姿。

けれど、今…真田幸の姿がある。


慈しむように…俺の傷だらけの手をなでて布を巻き、目を細めた。



「幸…」

『あい、なんにございましょう?』

「お前は、逃げ出そうと思わなかったのか?」



俺は、おそらく彼女にとってかなり酷なことを聞いているだろう。
それでも、ここに当たり前のようにあるこの存在に違和感がありすぎて口が動いた。



『なぜ、逃げ出す必要があるのでございましょうか?』

「…なに?」

『片倉殿は知っているでしょう?
 某の家はもうありませぬ。


 お館様も養子といえど娘を得て、猿飛佐助はその娘につきっきり…
 信じていた政宗殿にも裏切られて…しまいましたゆえ…』

「…」

『それに、もともと私に帰る場所などありませぬ。』




あたりまえというように、きょとんっとして俺の問いに答えた後は再び俺の手を手当てし始める。
けれど、その手は震えていて。



『ふふ、武将としてあるまじき感情にございまする。
 一度は死を覚悟したのに、今は拾ってもらったその場にすがるばかり…

 いっそ、ここで殺してもらいたいものですが。』



それは、幸が今生きていることを恐れているからか、それとも…
くすくすと笑い、そして布で覆われている目の部分に触れた。



『片倉殿、私はあの方々を見間違えていたのですね。
 片目になった今はよくわかります…









 私は、これからずっと独りぼっち。』



だが、左の眼は常闇を…
光など映さないそれには、一筋の涙が通った。




「幸様。」

『…あい、
 それでは片倉殿、また、いずれ』




にこりと、最後はまるで別人のように笑い。
そして、おそらく外に待っていたであろうその忍に歩いて行った。





*-*Side Sasuke*-*


「大将、頼むっ 奥州には今雪ちゃんが」

「わかっておる、」



奥州から戻った。
今まで雪ちゃんが心配でずっと陰ながら見守ってきた。

そんな時だ、川中島であった…あの竹中半兵衛って男が右目の旦那をさらって…そしてあの戦じゃ俺様がみる限り豊臣秀吉の後ろにいた黒い戦装束をまとったあの武将が竜の旦那を訪ねて、

もし、その時の返答が「雪ちゃんをさらう」ってものだったら手は出してた。
でも…その子が言ったのは





『っ貴殿は、変わったしまわれた・・・』





まるで俺様にも当てはまるそれを…言ったのだ。
心の臓が掴まれたかのように痛くなって…

思わず雪ちゃんのそばに降りたてば、「佐助!」と嬉しそうに抱きつかれた。

…なんで、この子はこんなに…平気そうにしているの?
だって、右目の旦那は…さらわれて…



でも、俺様は…大将の娘であるあの子を守らなくちゃいけないから。
一度、大将のところに行ってくるね、と言ったらわかった、とわらっていた。




「話せ、佐助。何があった」

「…奥州で一波乱。

 伊達が傘下におさめていたはずの周辺国と先端を開いたようです。
 竜の右目・片倉小十郎は行方知れず。」

「…」

「独眼竜・伊達政宗は摺上原で交戦中
 昨夜の時点で、戦況は伊達の不利」



だから、早く雪ちゃんを武田に連れ帰りたいんだ。
竜の右目は危ないと知っていても彼女を戦場へ連れてって兵の手当てにその力を使わせてる。

なんで?
あの力を使えば雪ちゃんは疲れて眠っちゃうのに、
それでもあのこはきっと使うよね

だってみんな大好きだから…
だから…




「雪ちゃん…」



そんなことのために、あの子を戦場なんかに…



「佐助。 幸はどこにいる。」

「え…」

「あやつを大阪より先…島津にて待機させる」




でも、大将から言われたのはその言葉。
今、真田に戻っているお嬢を?

あぁ、そうだ、
お嬢は紅蓮の鬼姫…戦には慣れてるし…そのほうが…



なんて、思ったのに…






「んだよ…これ…」



お館様に言われて、訪れたお嬢の故郷。
けれど、民はおろか周りは森と田畑だけ、

そこも荒らされていれば…真田の城は…






ただの、焼き後となっていて…




執筆日 20130816



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