私は、伊達包囲網には加わるなと言われた。
その代り、私には大阪に戻れと…

ゆえに、大阪まで休まず2.3日ずっと馬を走らせて、
着いて、すぐに待機していた兵士の方々に馬を任せれば、まだ家康殿や三成殿はいないと言われ、少しホッとする。

それから、兵たちに半兵衛様より言われていたその言葉を聞けば「地下の座敷牢に」と一言。


黒の衣を脱ぎ、そして一度部屋に戻って着替えを済ませる。

髪をほどき、片目を布でふさいだ。




すべての準備を終えたあと、あまり光の届かない座敷牢へと歩みを進めた。

牢を守る兵たちは私の姿を見て驚いていたが、笑むこともなく中に入り、目的の場所まで


戦が出来る状況じゃないと、思わせるだけ・・・
だから体中に包帯を巻いて半兵衛様より頂いた、薄紅の着流しとそれから軽い羽織をきてそこに赴いた。


薄暗くとも、確かに彼はいた・・・



『片倉殿・・・?』



今だけは、麒麟ではなく、幸でも良いだろうか・・・。
きっと日向殿もそばについているだろう。

何かあればきっと…助けてくれる。


はっとしたように私を柵の中から見上げた片倉殿は私を映して、目を見開いた。



「真田・・・」



そして、呼ばれた名は…某の名。
でも、揺るぎはしない。

柵の錠を開けて入ればシュタリと開けた錠の前に日向殿が立った。
それは、まるで私も囚われ、といっても過言ではない



『・・・何ゆえ・・・この場所に・・・』

「それはこっちの台詞だ…なんで・・・お前…」



けれど、それが普通というように首を傾げれば逆に片倉殿からそういわれた。
あぁ、そうか…

片倉殿はあの宴においでで…なにより…真田幸は真田の地へと里帰りしていると思っているから…



『・・・私は・・・豊臣に拾われた身でございますゆえ・・・ここで保護されておりまする・・・。』



けれど捨てたとはいえ真田、と呼ばれるのは本当に久しぶりで…

スッと片倉殿の近くによれば暗い中でも目視できるのか右目を凝視している。
己の主と、同じような状況下に、あるのだ。

へらりっと、半分本当で、半分偽物の、言葉を吐き出せば、驚いたように私を見た。



『佐助の部下か・・・はたまた・・・あの天女殿の策略か・・・。
 本来ならば、真田に一度帰る予定だったのですが・・・その途中で襲撃され・・・こんな有様・・
 バカでございましょう・・・』

「もういい、」

『政宗殿にも、某は見放されてしまいましたゆえ。』

「幸!!」



突然の罵声にビクッと体が揺れた。
けれど…優しく頬に触れた手が、冷たい。

けれど温かくて…でも…傷だらけで。

きっと、この手はあのときの治療もされるままなのだろう・・・。


その手を取り、傷を撫でる。



『治療道具を貰ってきまする。少々お待ちを・・』

「・・・すまねぇな。」



それから微笑んで、そういって立ち上がれば、日向殿が「これを、」と私に治療具の収まっているであろうそれを差し出した。
あぁ、やはり彼は私の付き人か何かと思わせるためにこれをやっているのでしょうな。


だから、ここまでことが運ぶというもの、

それを受け取って、片倉殿の目の前に座り治療を始めた


執筆日 20130815



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