あれから、数日。
私は一人黒き衣をまとって歩いていた。
これは・・勝手な行動・・・。
怒られることは、100も承知。
けれど・・・今、確認したいことがある・・・ただ・・・それだけで・・・動いているのだ・・・
半兵衛様…よりも東方から戻った三成殿や家康殿が怖いが・・・けれど、最後に知りたいことがある。
それは、欧州包囲網をなし…半兵衛様自らとらえたという彼の右目…片倉小十郎。
彼がいなくなってあの人がどう動くのか…それが知りたかった。
なによりも、そばにいた右目。
つい昨日までは自称天女な雪殿とともに笑んでいた彼がどう表情を崩すのか、何を望むのか…
猿飛の真似事で気配を消して、伊達の屋敷に入る、
さっき駆け込むように兵士が入っていったから、おそらくは情報は今しがた入ったばかりなのだろう。
衣の中に手を入れて、確かにそこにそれがあるのを確認する。
できれば、これ以上政宗殿の仲間を減らしたくない、というのが本音。
そのまま歩いていけば、庭のような場所。
カチャリ、と刀を下ろした政宗殿が見える。
さっきの二人とは別に、もう二人。
確かあの4人は松永と対峙したときに人質に取られていた方々だ。
なら・・・いいか・・・
なんて思って、そのままことの成り行きを見ていたら、半兵衛殿の名前が出た。
まぁ、人質を使ったという話をしていたから、きっと流れてしまったんだろう。
それだけならいい。
4人が走り去る、
くるりっと身をひるがえした政宗殿。
あぁ、屋敷に入る前に私の知りたいことを聞かなければと、足を踏み出せば砂利が音をたてた。
その物音にこちらを振り向いて彼は目を見開く。
「・・・テメェ・・・」
けれど、その灼眼はすぐに怒りや殺意をはらんで私を映した。
顔は見られないよう、少し視線を下に下げる。
『朝早くに失礼いたしまする。
どうやら、右目殿はいないようで・・・』
「アンタんとこのお偉いさんが拉致ったんだろ・・・で、何が目的だ。」
そのまま、
はだしのまま、私の元へと歩いてくる。
抜き身の刀。
別に私は戦いに来たわけではないからあの長剣はもっていないというのに・・・。
「雪か・・あの力か・・・」
『!』
「だから、小十郎と交換ってか、
ハッ、悪いが雪はわたさねぇ。」
けれど、言われた名に、驚いた。
何故・・・
『っ貴殿は、変わったしまわれた・・・』
あぁ、滾らぬ理由が分かった。
この方はもう堕ちている。
もう、「某」を、見ては下さらぬ。
衣から手を引き抜く、
持っている煙幕玉をそのまま、地面にたたきつけて、走り出した。
パキッ・・・
待機させておいた馬に飛び乗って、そのまま駆け出させる。
もういい。
『(さよならです、伊達殿。)』
もう少しだけ、信じて居たかった。
執筆日 20130815