『・・・』
ザバッと水の中にもぐり、そして力を抜く。
ぷくぷくと熱を冷ますように気泡が身体を抜けて、気持ちが良い。
戦は豊臣の勝利に終わり、そして、今は大阪。
城へ戻る前に夜になり、兵も疲れているからと野宿をすることになった。
だから許可を貰い、近くの泉へと水浴びに来た。
耳元で響く、悲鳴。
それでも、それが、私の生きる意味となるのならば・・・
そのまま軽く手足を動かせば、身体は水の中を進んで行く。
息が続かなくなった頃に顔を上げれば、水は丁度腹より少し上あたりまであり、一房だけ残した長髪が背中に張り付き、水に浮かんでいる。
水面に映るつきは上弦ではなく、満月。
それはおそらく石田殿をあらわすには丁度良いのだろう。
けれど、月といえばあの方しか思い出せなくて・・・
でも、その方のそばには、もういれなくて・・・
それでも良いと、思ってしまう。
『・・・どうせ、私は』
どこへもいけない、死にたがり・・・
「麒麟様。」
『・・・何用だ。』
けれど、背後の・・泉の淵にシュタっと舞い降りてきた忍・・・日向殿は頭を下げたまま
私の姿を映さないためだろう。
女子の身体など見ても仕方はない。
それに、私の身体は傷だらけだ。
「竹中様が、麒麟様の耳に入れたい情報があると」
『私の?』
「次の進軍先だとか」
『・・・すまぬ、すぐに準備するゆえ忍具を貸してくれ』
「御意に。」
だが、この身が必要とあれば、すぐにでも駆けつけたい
執筆日 20130812