すでに、何日も日が過ぎ、それでもこいつは私に心すら開かない。
「食え。」
膳を持ってこさせても、なんの反応も示さず、ただじっと部屋の隅で小さくなっているだけ、
手負いのせいで警戒しているのかそれとも、もともと興味すらないのか・・・
よくは、分からないが・・・。
あの忍が何故、私にこれを託したのかはわからない。
それに、わざわざ私をあの鴉によってあの場へと連れて行かずとも・・・いや、確かに秀吉様の領地にのこのこ入ってきたら私が斬りつけるだろうが。
「おびえるな。」
声をかける。
それに、ゆるりと視線がこちらに向いたがまるで生きていることを拒否しているような、
生きていることを恐れているようなその瞳の色に、罪悪感が襲う。
「毒なぞ入っていない。来い。」
こいつが来た初日は暴れまわりさすがに、刀を抜き声を荒げたが数日たちおとなしくなりすぎてしまった・・・。
「大丈夫だ、食え、」
だが、半兵衛様がこれを見たいと言ってくださったのだ。
ならば少しでも元気を取り戻した方が良いだろう。
今のこれは死にかけの人形だ
「こい、
来ないなら近づくぞ、」
私の言葉にもう、見向きもせず、ただじっと空を見つめて壁に寄り添っていた。
さらりと、頭を撫でてそっと抱き上げる。
食い物を食べていないせいで体温が低くなっているのだろう、触れる肌は冷たい。
「お前は死ぬ為に生まれた訳では無いだろう。」
お前に生きて欲しいと思う人間もいる。
私に力を与えてくださった秀吉様が私に生きることを許可してくれたように・・・
執筆日 20130628