「政宗様。」
「Ah?」
上田に来て、どれぐらいたったのか・・・
時間の実感がわけねぇ
壊れてしまいそうなほ細く、星のような銀の長髪
何よりもすべての罪を映し出すような緋色のBeautful eyes・・・
全てを魅了する雪
俺の右目のことも知っていて・・・同情ではなく、愛をくれた。
だが・・・何かが違う・・・
何かが・・・・
俺の前にたつ小十郎。
その目は何かを孕んでいた・・・
「一体何時まで上田に滞在するおつもりですか」
「どういう意味だ」
「そうでございましょう、同盟したとはいえ、ここは貴方様の領地に在らず
貴方様には奥州の民の暮らしがかかっておるのですぞ」
言われた言葉に一瞬固まった
あぁ、そうだ、ここは甲斐だったな・・
でも俺はまだあいつと戦ってねぇ
アイツと・・・アイツ・・・?
「・・・?」
「政宗様?」
誰だ・・・アイツって・・・
甲斐の虎か・・?
いや・・・違う・・
もっと年が近くて・・・女・・
女・・雪? いや、違う。
雪は戦えねぇ・・・もっと・・・熱くて強い・・
この俺を、垣根なしでヒートアップさせる・・・心やさしい・・女・・・
俺はそいつの____でそいつは____でなによりも俺は・・・______
「っ・・・」
「政宗様!!」
一気に気持ち悪くなる。
なんだこれ、
「あいつ」は俺にとってとてつもなく大切だった。
なのに・・・「あいつ」って誰だ?
必死に思い出そうとするが、そいつの姿は霧にかかったように見えない。
誰だ・・・っお前は・・
ぐらぐら、ぐらぐら・・・
思い出そうとすればするほど、痛みが酷くなる。
頭を抱えて、崩れ落ちる。
小十郎の声さえ、今はつらい。
なんだ、これ・・・
『政宗殿!次は負けませぬ!』
誰なんだ、お前は・・・っ
「政宗?」
「っ!!」
「テメェ・・・」
聞こえてきた、女の・・雪の声
霧が晴れて行く。
そして、「___」も消える
頭の痛みもねぇ・・・
ゆるりっと顔を上げれば、俺の前へと座り込む雪。
その表情には・・・___
「雪・・っ」
「うん、どうしたの?」
「きえんな・・きえないで・・・っ」
「政宗・・様・・?」
あぁ、もしかしたら、あの後姿は・・・
雪を俺から奪おうとした「アイツ」の姿っていうことか・・・?
「大丈夫、私は、雪は消えないよ。だから
政宗も、雪を愛して?」
俺の右目に手を当てて、そう、雪は
微笑んだ
執筆日 20130601