「猿飛!!」
天井に向かって声をかける。
なんで俺がこんなことしなくてはならないのか激しく理解が出来ないが、だが、仕方が無い、
今は政宗様がここで世話になっているのだからな・・・
俺が猿飛を呼んだ理由は一つ。
客が来たからだ。
四国から長曾我部元親
安芸からは毛利元就・・・
なんだこの武将の集り方は・・・と思うが政宗様もその一人なのだから何もいえない。
だが・・理由が理由だ・・・
「・・・何の用? 片倉の旦那。」
ストっと天井から床に降りて来た猿飛はどうやら機嫌が悪いらしい。
俺の知ったことではない。
「客だ。」
「・・・また雪ちゃん目当て?・・・ホントー雪ちゃんって罪な天女さまだなぁ」
猿飛の言った、「雪」
それが、理由。
ただ一人の女の為に、国を空けてまで敵国に来る理由がわからねぇ・・・
政宗様は何を考えていらっしゃるのか、武田と同盟まで組んでしまった。
それは、あの女が「政宗と私は、戦いたくないよ」なんて言ったことから始まりそして「ねぇ、これからも仲良くしたいから武田と同盟を組んで、もちろん対等の立場で!」という女の言葉に踊らされた結果。
あの人の目は、確かに人を見る力がある。
だが・・・その目は曇ってしまったのだろうか・・・
あんなにも・・・真田幸との戦いを楽しみにしていたのに・・・
「・・猿飛、もう一つ聞くが」
「何? 雪ちゃんのこと意外ならいいよ。」
「・・・何故、真田は本家へ戻っている。」
「は?なんでお嬢のこと?
もしかして片倉の旦那、真田のお嬢に脈ありぃ?」
「・・・」
何言ってんだ・・・と言いかけて・・・とまる。
猿飛の目は、ひどくくすんでいた。
狂ってやがる・・・
まるで・・・記憶をすりかえられているかのように・・・
あんなにも・・・あんなにも・・・真田を娘のように、妹のように、可愛がっていた、背を守っていたあいつが・・・
そういえば、あの日真田が女の格好をして宴に顔を出してから・・4日もたつのか・・・
一瞬だけ・・・政宗様が正気に戻られた・・・
だが・・・真田が立ち去ったとたん、また「雪、雪、」と女に擦り寄る。
見ているこちらが、気味が悪い程だ。
「で?誰が来たって?」
「長曾我部と毛利だ」
「うへー、それはそれははるばる甲斐までご苦労なこった。
ま、感謝するよ片倉の旦那。」
一度話が戻り、そのままシュッと猿飛は目の前からいなくなった。
だが・・一度真田の名を出したとき・・・
「(猿飛の目は・・・光を取り戻した)』
どういう・・・ことだ?
執筆日 20130530