馬が悲鳴を上げた。

鎌ノ助殿の私を呼ぶ声。
ガシャンっと籠がゆれ、はっとして起き上がったが、体が放りだされる。


ズザッと地面へと落ちれば「幸さま!!」と私を呼び駆けつけてくる。
そして私の前に立つとスっと武器を目の前に向けた。


そこに居たのは



『風魔・・小太郎・・?』



忍・・・伝説と言われているその人がいる。
表情が見えない兜

背中に備えられている2本の刀。

ポタポタと鎌ノ助の足元に滴る・・・赤。


もしや・・・ 怪我を・・・



「っ幸さま、貴女はお逃げください!」



私を逃がそうと、声を張り上げる。
けれど、その姿は突如後ろへと吹き飛ばされる


目の前に、居るのは、鎌ノ助殿ではなく・・風魔殿だった。


あぁ・・・


『風魔小太郎殿と、お見受けいたす。
 某、真田源二郎幸と申すもの。

 どうかここは私の命と引き換えに、ひいてはくれませぬか?』

「幸さま!?」



私の足は、先ほどの衝撃で仕えぬ。
風魔殿は風の悪魔とさえ言われておる忍

こんな足では、とうてい逃げられぬ。
それに、某はもう・・・武田には必要ないのだ。

だが、鎌ノ助殿は、佐助が目を覚ました後に、支えてやる一人



「風魔っやめ! その方に手を出すなぁああ!」

『鎌ノ助。』

「!?」



後ろから叫ばれたが、ユラリ、と立ち上がり、いつもより低い声を出して、そういう。
そうすれば、息を呑むように、彼は黙った。

クスリッと笑って振り返り微笑んだ

絶望を孕んだその瞳。



『今まで、ありがとう
 どうか某がこの場に散ったことは、お館さまや、皆のものには内密にお頼み申す。』


散る命は、仕方のなきこと。
元々、戦場にて散るのが武士の運命

それゆえに、某は、満足しているのだ。



『忍よりも、武将の首の方が価値があろう、風魔殿。」 





最期は「某」として散りたい









執筆日 20130518



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