紅が散る・・・
彼女の、「 」が散る
ゆるりっと傾いて行く、幸の体。護るべきその人は、彼の忍を護って散る。
最期に彼に微笑みかけて、するりと髪を結い、彼女を彩っていた桜の簪が落ちて、シャラリっとはかない音をたてて転がった。
「幸さまぁああ!!!!!」
絶望の悲鳴。
風に舞う、所々切られた髪と
そして彼女の紅色の着物の切れ端、
月の光に、紅が映える。
地面に飛び散ったのは命の液体。
だが、鎌ノ助が手を伸ばす前に、傾いて行く彼女の体を支えたのは彼女を手に掛けた張本人。
「っき、さまぁ!!」
腹のそこから血を吐くような低い憎悪を孕む声。
己の武器で攻撃しようとするが、すでにボロボロの体。言うことを聞かず、立ち上がることすら困難だった
歯を食いしばる、
しかし、無傷の風魔は幸を軽々と片手で抱え上げると、羽虫を叩き落すが如く武器を振り上げる
ガキンッ
だが、ソレは鎌ノ助を襲うことはなかった。
風魔が叩き落したのは、クナイ。
シュタっと、その場に舞い降りる金色
上杉が忍 かすが
護るように、鎌ノ助の前へと立ちふさがった
「風魔、どういうつもりだ。」
「・・」
「真田幸を返してもらおう、たとえ、死んでいたとしてもだ。」
無言、
恐ろしいくらいの重苦しい空気が漂う
だが風魔は風にまぎれて消えた
残ったのは、彼女の一部だったものだけ
「っ幸さま・・・っ」
あぁ、もう・・・
護るものは居ない
*-*崩れた日常*-*
もう、世界に彼女が存在する意味が無い
執筆日 20130519