-まかせた-
黒の騎士は一言いって、駆け出した、
周りはざわりとしたが、騎士の横にいた忍は当たり前のように一度返事をし、振り返る。
すべては、決めていたこと。
「彼女」にとっては見慣れた風景の中。
しかし「騎士」にとっては初めて踏む地。
もう、おそらく気が付かれているだろう、と、本人は気が付いていた。
しかし、彼女にはもう関係ない。
風をまとい、罪を纏い、闇を、まとい、
もう二度と、戻ることはない時間へかけていく。
大きくそびえたつ城門を超剣が切り裂いた。
それをかなめに上がるおたけび、
紅に混じる黒。
馬にまたがったまま、超剣を振り回し、敵将を薙ぎ払っていく。
だが、彼女の道に、一滴も赤は散らなかった。
「きよったか、」
本陣、というよりは、奥。
紅の大虎は大采配を持ち、立ち上がった。
たった一つ。
まるでまっすぐに、何にもさえぎられることもなく駆けてくる蹄の音。
的確にここまで来ているのは明らかであり‥
黒と、紅、
ダッと舞い降りるのは、黒の騎士、
顔隠しがふわりとまくれ上がり、その素顔を晒せば、
紅の大虎は静かに目を見開き、
周りの家臣達はざわりと、隠しきれない動揺をあらわにした。
『武田が総大将、武田信玄どのとお見受けいたす、
いざ、死に踊っていただきとういただきます。』
執筆日 20141023