ダメなんだって、思った。
もう戻れすらしないって、
俺様は気が付いていたし知っていた。
幸ちゃんを殺したのは、俺様だ。
苦しめたのも一番に裏切ったのも、あのこを忘れちゃったのも、
全部俺様だ。
「だけど、お願いっ
死にたがりなんて言わせないで…!」
本当に、これは言えることで…、
ごめん、ごめんね…
何回言ったって謝り切れないんだ。
なのに、彼女を包んだのは…見たこともない、黒。
頭を抱えて、崩れ落ちた彼女を包む黒がひどく恐ろしくて、必死に手を伸ばしたけれど、
幸ちゃんの体が水の中に沈んだ。
今度こそ、はなしたくなくて手を伸ばしたけれど、黒い炎が俺様の手をからめとり、水の中へと引きずり込む。
いきなりのことに体はついていかなかったけれど、水に叩き付けられて頭が痛くなった。
でも、
黒い炎がゆらゆらと吐き出されるように幸ちゃんの体から洩れていく。
虚ろな瞳で、何もうつさないような、鏡みたいな目で水面へと手を伸ばし続けている彼女の手を、つかみたくて手を伸ばしたけれど、
それよりも先に、俺様の首には黒いそれが巻き付いて、息苦しくなった。
それでも、どうにか手を掴もうとしたけれど、その前に、その黒に重なるように俺様の首に這わされた細い指、
冷たい瞳が俺様を映している。
でも、貴方にだったら殺されてもいいって思えてるんだ
その手で殺されるなら、本望だって
水面を背景に、月明かりに照らされた貴女は何よりも美しくて・・
手を伸ばし、夢ではすり抜けてしまったほほに手を伸ばせば、
ゆるりと、一瞬だけ目が揺れて
ごめんね、
あいしてるよ、
なんて、いまさら過ぎる言葉をはいて、
すぅっと意識がとんだ
そう、これで、
これで、よかったんだ
執筆日 20140621