なのに、この男は何を言うのだろう…
ゆっくりと近づいてきて、バシャリと泉に降りてきた。

なぜ、と…そう考えていた矢先に伸ばされた手…

どうして…どうして…!



この男は、どうして私に手を、差し出す・・・っ!

なぜ、そのような懐かしむような眼で私を見るのだ…っ



ゾクリと悪寒が走る。

ずっとずっと奥のほうに眠る紅が…




掘り起こすな…!!





ブワリと体を包み込む黒。

それに驚いたようだがその前に短剣を振り上げる。
交わされたが、構わない


足を水にとられたってそれでも刃は振り続けた。


時に赤を散らしてそれでも、降り続ける。






「っ俺様を、憎んでもいいよっ」

『!』

「恨んでも、俺様のことをどう思ったっていい!!」



一瞬、ぶれた刃を、そのまま掴まれた。
そのせいでつかまれた刃はバキリと音を立てて折れる。


嫌だ、と



「だけど、お願いっ
 死にたがりなんて言わせないで…!」



そう思っているのに、この男は、その手から新たに傷を作ろうとも私にそういっているのだ。

そんなこと関係ないと、私に近づいてくる。


どくどくと、変に心臓がなり…
ここ最近、感じることがなかった「何か」が今にもあふれだしてきそうで、



『私は…っ』




死にたがり、では、ないと…








言いきれなくて、







あぁ、もう、いやだと…








「っ幸ちゃ…」





伸ばされた手、


その手に触れることもなく包まれる黒




息が苦しくて、それでも、目の前の男は私を包もうとして、手を伸ばしてたから









執筆日 20140603



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