橙の髪の色をした迷彩を纏う忍。
私を見、泣きそうに表情を歪めている。



『(松永・・・あやつ・・・っ!!)』



私を、嵌めたのか…
これは豊臣のものでなく、別のもの…っ

腰にさしていた短剣を抜き構えた。
そうすれば忍はさらに目を見開く。



「幸…ちゃん…?」

『っ貴様、どこの忍だ…この笛…何をした』

「何、言って…」



そして、こいつも「あの名」を呼んだ。
ズクリ、ズクリと痛む頭に表情を崩さぬようにばれぬようににらんだ。

こやつは、敵だ。

豊臣に…秀吉様に旗を掲げる、敵だ…!




「っ俺様の、せいだね…」



にらんでいる私に、さみしげに笑む忍。




「幸ちゃんが、豊臣に行ったのも、壊れちゃったのも…俺様のせいだ」

『私は、麒麟だ…っ』

「ううん、貴女は幸ちゃん…ううん…



 俺様が知る、弁丸様だ」



なのに、変なことをいう。
ずきずきと…だんだんと頭の痛みが体に広がっていく。


幸と…弁丸と…っ


やめてくれと、こころの中で叫んだところで、だれにも届きやしない。

それでいい、それでも、いいのだ…





誰にも届かなくて、いい…









「武田へ、帰ろう。幸ちゃん」










なのに、そんなことを、この忍はいった。




執筆日 20140430



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