『…』



甲斐より多少手前に今いる。

走りっぱなしだった故とうとう馬が悲鳴を上げた。
壊すわけにはゆかぬ

ひとまずここで休ませるため馬から降りた。


まだ…おそらく大丈夫だ。




『(しばらくは…ここで息をひそめるか…)』




旧北条に近い故豊臣軍である私がいても違和感はない。
だが、あまり大きいことはできぬ。


手綱を離せばゆっくりとした足取りで湖まで歩いていく馬
一つため息をついて足の防具を外す、
それを近くの木の根元へと置き、武器も下す。



『…』



私はここに来たことあるのかも知れない。
あぁ、だが・・・・




『(少し…疲れてしまったのかもしれない…)』



身体がだるいとか、体調がわるいわけではない。
ただ、うまく身体がうまく動かないのだ…




『…鵺に…喰われてしまうな…』



重い防具をすべて外し、おとす。
ただ護身用の懐刀だけを腰にさした

素足になり、そのまま湖へと歩いていき水の中に降りる。


ぱしゃりと音を立て水門が広がっていく。



今の深さはひざ下ほど。

ゆっくりと歩いていけば何に感かされたのかふわりと光がまう。

ひとつ、ふたつ…たくさんの、光…





『…



 あぁ…』




来たこと…あるんだ…私は…
小さいころに…




『(あのころ…あのころは…まだ…武器も持てず…)』




ズキ…




何もできず…





ズキ…






連れ去られて…






ズキ…














逃げ出して…






チャリ…





装飾とくびにかかっている金属が重なって音を立てて我に返った。







『これを…吹いたのであった…なぁ…』




そっと、ふれる。
薄紅色の笛


吹いて、何が起きたのだったか…
確か松永がこれを吹けば希望が戻ってくるといった。



軽くくわえて、息を入れる。



鳥の鳴くような甲高い音…





『っ…』




ズキっと突然頭が痛くなった。



いた、い…







痛い…っ!!




『ぐっ…』





バシャっと体制が崩れ湖の中に崩れ落ちる。

さらりと水の中に髪がつかる。




『あ、あぁっい、ぐ…っう…』




身体中が痛い。
痛くて、痛くて…っ



『あ、ああぁあああああああああああ!』












弁丸様!


幸ちゃん…?




何かの気配に背後を確認すれば一匹の忍が私を見ていた。



執筆日 20140426



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