本当は、信じたくなんてなかった。
でも、かすがから見せられたあの簪は幸様のもので…きっと…黒くなってしまったあの跡もあの子の生きた証なんだろう。
できれば、生きてることを信じて探して回りたいけど…それだけをやってるわけにはいかない。
だから…早くことを終わらせたくてここに来た。
「なるほどね…秀吉の行き先はやっぱり小田原か…」
もしかしたら、幸様につながってるものもあるかもしれないから。
俺様の部下である3人衆から報告を受けて息をはく。
「上杉の動きをにらんでいち早く作戦を発動するあたりさすがってところですかね、」
今、幸様がいない分…俺様が武田を支えなくちゃいけない。
元々、幸様が武田の次期当主として挙げられてた、
その場所を…「居場所」を…俺様がまもってあげたい。
「だとすると、北も手すきとは思えない、
もしかして…まだ奥州に…いや、その後ろになにか…」
でも、俺様じゃだめなんだ。
あそこに立つのは貴女じゃないと、
暖かいから、優しいから、ひきつけられるから。
だからみんなついていく。
「(幸様…)」
俺様…さ…
真っ暗で何にも見えないんだ。
自分のせいってちゃんと理解してるよ。でも…
「(寒い、なぁ…)」
暖かくて、眩しいほどの炎(ヒカリ)…
もうそばになくて、そばにいれなくて、だから寒くて…
「(幸…ちゃん…)」
大将の命令とかじゃないんだ。
俺様は、貴女にあいたいだけで…傍に居たいだけで…
しゅっと三人が俺様の前から消える。
気配がなくなってから立ってた木の幹に背を預けた。
「あいたい…よ…
幸ちゃん…っ」
弱音だけを吐いてても仕方ないけど…でもさ…
今だけは・
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光と闇は表裏一体だから。
執筆日 20131227