『…』



馬の背に乗りながら男が言った言葉を考える。

わたしのきぼう。


それはいったい何だったか





ふっと、目を閉じれば暗闇の中…


大きな背が見える。


ただ、まっすく前を見つめ、こちらを振り向くこともしないその背が・・・



「幸よ。」

『…』




びくりと、肩を震わせてしまった。
でも、その言葉は私にかけられているわけではない。


ぐんにゃりと世界が歪み見たことがあるような風景へと変える。




「おぬしはそれでよいのか、
 女としての生をまっとうしなくとも…」

『はい、それがしはおやかたさまについていくときめもうした。』



そして紡がれた言葉を、赤い衣を纏った「もうひとり」のわたしが答えた。
長い髪を、高くに上げ、光り輝く瞳で男を「お館様」といい、まっすぐ見据えていた。


こんなの…



「それがしにいばしょをくださったのは、あなたさまにございまする。
 ゆえに、ひつようとされなくなる…そのときまで…





 それがしは、あなたさまのやりとなり、このみをいくさばに・・っ」





こんなの、意味なんてない・・・・





ふらふらとその景色から逃げるように後退する。

その瞬間、ガクンっと足場がなくなって体が傾く。



『あっ…』




景色が崩れていく。
周りが鏡のように様々な景色を映していく。


そのすべてのなかの「わたし」は笑顔で…


両手で耳をふさいで、目を閉じた。






こんなのは、げんそう。

まよわされたくない。





もう、もう、もどれないのだから…







あまえてしまえばよい。




『いやだ…そんなのっ…』




きでんは、ひとりではない。


もどれないとわかって、あたらしいばしょをみつけて…


でも、もうそのばしょは




『うるさいっ、わたしは…!!』














最後に流れたのは










       ひ


  と


     り


            ぼ


   っ


        ち


 に

 
                  な

 
    り


             た

 
 く

  
        な


   い








小さい頃、たわごとのように口から出していた、その言葉


執筆日 20131214



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