『…どくがんりゅう…だて…まさむね…』
ひどくきいたことがあると…心の中で思ってしまった
どこで会ったのか、いつあったのか…
その姿さえ朧で何も思い出せないが
確かに…私の中にその男はいる。
「思い出したかね。」
『いえ、まったく。』
「クク、これはこれは、気分を害したらすまないね」
『別に…今は半兵衛様が命より貴様についてきているだけだからな』
私がつぶやいた言葉が聞こえたのか、男が振り返りそう告げた。
別の方向を見やれば月。
あぁ、そういえば奥州の竜は三日月を掲げていた
なんて…
「卿は力の強さを知らないようだ。」
『…』
「今や、豊臣の麒麟といえば「死にたがりな死神」として有名なのだよ。」
『…興味がない』
なのに、この男は何を思ったのか私にそういった。
それがどうした。
私はこの身を秀吉様が治めし天下のために、半兵衛様が作りし策のためにひとつの駒として動いているだけなのに、
「なに、今にわかる」
さらさらと文をしたためながらいう松永。
そして書き終わったのか、風魔殿を呼ぶび、何かを包むとそれを手渡した。
受け取った風魔殿はその名の通り風のように姿を消したのだが
「さて、見苦しいだろうが卿にも少々協力してほしいことがあるのでね、」
そういって差し出されたのは、朱の戦装束とそして一本の長槍
執筆日 20131020