「くそ…っくそ!」
あんなに人間らしいあいつを見たのは…正直初めてだった。
たった一つの簪を手に涙を流していた、
里のどんな辛い訓練にも…身内殺しでも…表情ひとつ崩さなかったのに…
たった一人の女のために、涙を流す。
私も…織田の嫁に謙信様を討たれたときには気が狂いそうになった。
結果的には…助かったからよかったが…
もう…真田はいない…
「(だが…あの六文銭は私が用意したものじゃない…)」
上杉の忍が真田でのことを私に伝え…そして向かった時には焼けた屋敷を前に涙を流しながら真田の母が胸に抱いていたものだ。
だから…
「(あいつか…それとも…)」
風魔が残していったのか…
そんなの見ていないからわからないが…
「(生きていろ、真田…)」
お前は、まだ…
散るべきではきっとないのだから
執筆日 20131014