想イ輪廻 | ナノ

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頷いたあと、全てを理解した。
私を拾った…もとい、助けてくれた石田三成は、私を庇ってくれたのだ。

けれど…本当にどうして私はここにいるんだろう。
確かにあの時トラックにはじきとばされて、死んだと思った。むしろ間違いなく死んだ。そうしたら時間を飛んでいた…なんて笑い話どころじゃない。
弟に話したら間違いなく頭がイカれたと思われて笑われるだろう

周りを見れば、教科書に出ていた豊臣の旗が風になびいている。それだけじゃない、ところどころ芥子色や紫色の旗もある。徳川と石田の家紋で間違いない。
そして、私のように怪我をしている人も多い。

自分を見れば、白いワイシャツには血が付いたのか酸化して黒くなっていて、スカートはところどころ破け正直大惨事だ。

ローファーは、片方脱げているし、手は血が乾いていてかぴかぴになっていて気持ちが悪い。出血は止まっているのは、ありがたいが。

このケースも凹んでいないから…中に入れている私の相棒も大丈夫だろう。とにかく、このどうしようもなく痛い肩をどうにかしなくては…


『…凄い音しますけど、無視してくださいね。』


多分、この痛みは脱臼。もともと若干癖が付いていたから仕方がない。医務の先生に応急処置も教えてもらった。

それをやるのだけれど…凄い音がするんだよな…痛いし…でも、何もしないよか大分いい。長く放置するほど危ないこともない。

利き手ではない左手で右手を掴み、そのままグッと力を入れれば、ガコン!なんて酷い音がして、骨がはまった。
うん、本当に凄い音がした…骨を伝って音が響いたから自分でもびっくり…

顔を上げれば、二人も驚いたように目を見開いている。


「弥月…今の音は…?」


顔を引きつらせた徳川家康が私の名を呼ぶが、ニコリっと笑ってみせたのだが『応急処置です』と返すしか無いだろう。

だって、本当に応急処置だもの。なのだが、思った以上に身体は痛かったのか、鼻の奥がツンッとした。


「蘭学の知識があるのか?」


本当は固定しておきたいが、そんなものはない。だが、軽く肩に触れ痛みを確かめる私に言ったのは石田三成だった。

蘭学…この時代でいう医学のことだろう。ただ、まだまだ見習いでそんなこといえないから『多少』と答える。
理系、それに専攻に医学を取っていたが、将来の夢は医者だからあってなくも無いが…


『包帯とか、あったらください。石田様に助けられたのも何かの恩、私にここにいる彼等の手伝いをさせてください。』


助けられた恩…では無いけれど、医者を志していたものとして、救える命は救いたいと思う。
見習いっていう器でも無いけれど、助けたい。


「だが、弥月も怪我をしているだろ?」
『1人いるのといないのでは大分違うと思います。私に、1人でも多く救わせてください。』


確かに、血液感染の心配もあるけれど。それは私が少しでもフォローすればいい話だ。
虫のいい話かもしれないがこの場所で一人で置き去りにされてなにもしないよりずっとましだと思う。


「わかった、用意させよう。他に必要なものはあるか?」


そう思った私に対して、少し心配そうに言った徳川家康は、おれてくれたのか私に聞いた。
ぐるりっと見回せば、ケースとは別に石田三成の足元にある私の鞄が目に入る。確か、あの時は・・・持っていたはずだ・・・


『私のかばんの中に、簡易ですがそろっています。使ってもいいですか?』


消毒液や絆創膏は使えない。この時代には無いものだろう。もともと使うつもりも無いけれど、私が今ほしいのは鋏なのだが突然現れたに等しい人間に得たいの知れないものを返してくれるだろうか。

いや無理か…と、そう思っていたら、トス、っと目の前のにかばんが落とされた。顔を上げたら、私を睨む石田三成と目があう。変なことをすればいつでも殺せるといった感じだ。


『あ、りがとう、ございます。』


少しは信じてもらえたのだろうか・・・。吐き出した言葉はたどたどしくなってしまったが、お礼は言えた。受け取って、立ち上がる。
ふと脳裏に浮かんだのは、とある医学書で読んだ内容だった。


『一薬草ってありますか? 出来れば、湯も用意してほしいのですが……。』


いいでしょうか…。と続ければ徳川家康は頷いて走って行った。
消毒液は使えない。ならば薬草。
この辺りにあるかどうかはわからないがあるのならばないにこしたことはない。

私が救える人はいないかもしれない。それでも、少しでもと、そう思ってしまうのは。


執筆日 20130114


 
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