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ふわりっと、暖かい何かが私の頭を撫でた。
体が動かない。痛くて、少し、苦しい。
ゆっくりと瞳を開けば、灰色と、銀色。だんだんと視界がはっきりしてきて、視線があったその人が目を見開いて私を凝視している。
銀色の特徴的な髪型に、ところどころ赤と、黒が混ざっている。
そして、独特なその匂いも。
『…血…?』
思わず口にしてしまった。
あまりにも見慣れない光景と、不自然な世界だ。いや、逆に「自然すぎる」世界かもしれない。
ここは、どこだろうか?
そう思って、視線だけを動かして、暗い空の色とその他もろもろをみて意識が覚醒していく。
気がつかなかった…。
頭が覚醒していくからか世界がはっきりとしていく。電柱が一本も無い空は何もさえぎる物がないからこそ広く、家もアスファルトも無い。
その代わりにあるのは、焼けた野原と、血と、鉄と、鉛のにおい。
上がる煙は、…多分狼煙だろうか。
体を起こそうとして、腕に力を入れた。
痛みが走ったけれど、触れなければおそらく大丈夫だろうとそのまま起き上がろうとしたのに、目の前に居たその人は、私の肩に、掴んでおそらく、かなり優しく触ってくれたのだ、けれどその力は私にとってはかなり強いものだった。
思わず手を払う。
目の前の人が驚いていたが、左手で右肩を抑えた。
痛い、痛い…
痛みがあるということはこれは夢ではないんだろうと、改めて現実だと知る、
受け入れられない。涙が、頬を伝った。どうして、私は…
『(ここにいるの…?)』
生きていた世界が違う。
頭の中に浮かんだその可能性に、涙が止まらなくなったのは、心が確かな現実逃避をしていたからだ。
執筆日 20130111
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