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「お前も大変だな。」
『小十郎さんもあのような暴れ竜の右目では大変ではございませんか?』
クルクルと中途半端に巻かれた包帯の続きを巻くのは奥州筆頭であるさっきの男・・・伊達政宗の右目・・そして伊達軍参謀である片倉小十郎さん。
様なんて堅苦しいからやめろと言われ結局さん付けだが、
家康といえばお茶を取ってくると行ってしまったし、
まぁ確かにお客様である小十郎さん行かせるわけにはいかないしね。
でもコレくらいなら大丈夫なのに・・・
『でも、民のことを考えている・・・やさしい目をしてました。』
「・・・お前・・・」
『普通・・・私みたいな一般兵の治療なんて好き好んでやったりしませんよ。
それにしても、酷すぎましたが?私の剣は・・・』
だけど、気になったのは剣のほうだ。
彼が気にするほど私の剣は下手だったのか・・なんて不安になったが、小十郎さんは首を横に振る。
「むしろ疑ったぜ、お前、剣に関してはド素人なんだろ?」
『はい、そうですが・・』
「それにしては、全然使いこなしてる。
あんな方法で持ちかえるなんざ見たことねぇ」
それからそう言われれば、苦笑いしか出てこない。
包帯を巻き終わった小十郎さんの手が私の頭を撫でる、
暖かくて優しくて大きな手。
でも、この手で私よりも、ずっと多くの命を散らせてきた。
こんなにも、優しい目をしている人が・・・。
「つらいのか?」
『え・・・?』
なんて考えていたらいきなりそういわれて、私の頭が混乱する。
顔を上げれば、寂しそうな目で私を見ている。
「見たところ、政宗様と同じぐらいだろう。
もう嫁に行ってもいい年だ。
なのにお前はそれをせず、軍医として、戦士として戦場へ行く。
命を救う傍ら、命を奪ってるだろ?」
『っ・・・』
「つらい、か?」
そして紡がれる言葉が、心を抉る。
この人は、あえてそれを私に聞くんだろう。
息を吐いてまた、その瞳を見つめる。
『いいんですよ、私はただの拾われ人。
どんな扱いを受けようと文句は言えません。』
「・・・」
『確かに、私のこの女の身体は子を宿し、育むためのものです。
それを裏切ったとあれば、私はきっと死した後、苦しみを与えられるでしょう。
でもいいんです。
半兵衛様が、教えてくださった、己の未来の為に、敵の命を奪うのだと・・・だったら・・・私は・・・・』
「三成!!政宗!!周りを見ろ!!!」
「「!」」
家康の叫びに似た声で私の言葉がかき消される。
周りを見れば、荒れ果てた場所。
それに驚いた反面。
聞かれなかったこの言葉に、酷く安堵してしまった。
執筆日 20130218
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