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静かな場所に響く複数の銃声。それを見物しているのは縁側に座る4人。
見られているのは言うまでもなく弥月だが、当の本人は見られていることなど知らない。
撃ち出す弾は樹に描かれた的の中央部を貫通する。まっすぐその目標物を捉える瞳は等しく獣の様だ。それこそ、彼女を戦場でそう敬称つけたもの。
装填できる8発を撃ち切り、タンッと地面を蹴って後ろに下がれば空となった銃弾を入れ替え、サイドステップを加えて身体を回転させ、的へと打ち込む。
中央からは外れるが、しっかりと、その樹には命中していた。
「…ありゃ、素人か?」
「…半分は、そうだと思うのだが・・・』
酷い集中力と動体視力。見物していた一人が呟いた。
それに答えたのは家康で、かちんっと弾切れの音がした瞬間、グルンっと手首にぶらさがっるよう固定した紐でレイピアを回し、右手で受け止めると地面を蹴って、樹へと
サンッ
振りかざす。みしみしと軋んだ音をたてて倒れた樹。
両の手の力を抜いて、弥月が腕を下ろせば銃を握っていた手に巻かれていた包帯には血がにじんでいた。
「・・・ほんっとうに素人か?」
「あれだけできれば、名は知れているでしょう・・・。」
そんな弥月を見て、客人の二人・・・方や奥州筆頭伊達政宗、方やその腹心片倉小十郎が言う。けれど、視線は弥月に向いたままだ。
「おい。」
『え・・・・・・・・えっ!?』
けれど、そんな彼女を呼んだのは、今まで一度も口を出さず、それを見ていた三成だった。
『え、あの・・・石田様・・・?』
ぐいぐいと手を引かれて、歩く。
何故、ここに石田様や家康・・・そして見知らぬ二人がいるのか分からないが・・・
誰・・・あの二人・・・っていうか、私は何故連行されてるのかな…
「座れ。」
『あ、はい・・』
それから連れてこられたのは家康達がいる場所から少し離れた場所。低いその声に従うより他なかった私は縁側に座る。スルスルと、剣をぶらさげていた紐を解かれ、銃を没収された。
・・・何故に・・・
『あ・・・血・・・』
でも、そこで初めて気がついた。
銃を握っていた方の手の包帯が、赤く血で染まっている。
どうやら血豆がつぶれて血が出てしまったみたいだ。
今まで気がつかなかったなんて・・・認識すればやっと痛覚が戻ってきたようでじくじくと熱を持ち始めて眉間にしわが寄る。
「・・・貴様気がついていなかったのか・・」
『あ、まぁ・・・恥ずかしながら今気が付きました。』
「医者の不養成とはこのことだな。」
石田様は気がついていたのか・・・多分、そしたらあそこにいる人たちも・・
『もうしわけありません・・・気をつけます。』
でも、へらリっと笑って謝罪。それにむっと私を睨む石田様は私の手の包帯を解いた。
執筆日 20130213
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