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いじめだと思うのは私だけだろうか・・・
短い髪に、髪飾りを付けられ、先ほどまでは動きやすく軽い甚兵衛だったにもかかわらず、今はきっちりと着せられた薄い紅色の着物である。綺麗な牡丹の花が織り込まれていて私には似合っていないと思うのだが脱がせてはくれないらしい
『ちょ・・・紅とかいりませんから・・・』
「田沼さま、飾り気が無いのは分かりますが、紅くらいは普通でございます。」
耳に飾りを付けられた上に、後ろ二人に抑えられているから逃げることが出来ない。悪いが私は普通の女なんだ…うん…普通の…確かにお洒落ではないが、強制されることでもないと思う。
「…はい、できました。」
唇を沿うように、指が滑った。
諦めて抵抗するのをやめたらすぐに終わる。まもともと痛みを伴うものでは無いのだがやけになったというべきか。。
着物が重い・・・。
「大広間へいかれますか?」
『勿論、さっさと済ませて着替えさせてもらう。』
「まぁ…、では行きましょうか。」
立ち上がれば女中に言われて、そう返す。
笑われてしまったが私は間違ったことは言っていない。こんな格好しているぐらいなら、さっきまできていた甚兵衛に着替えて外へ行きたい。
肩がこりそうだ・・・・。
「こちらにございます。」
大広間へと案内され、その戸の前。
女中さんたちは正座をしていて、でも私は立ったまま。正直言えばどうしたらいいか分からない。
「弥月君かい?」
なんて考えていたら中から声が聞こえた。
半兵衛さんの声で、『はい。』と返事をすれば「入って」と返ってくる。
女中の1人が戸を開けた。そこには、半兵衛様が居るのは勿論、その奥にはおそらく秀吉様と呼ばれるかのかたがいる。
そして、なぜか家康と石田様も居る。
さっき、私の名前が出たからか、振り返っていた家康が私を見て固まった。
うん。似合わないのは百も承知だから、ぶっちゃけ逃げたい。
「うん、似合ってるね。さぁ、弥月君、入っておいで。」
『・・・・はい・・・』
半兵衛様の目は節穴だろうか、どこをどう見れば似合っていると言えよう。明らかに着物に着られているのに。
でも、ずっとここにいるわけにもいけないし、視線が痛い。主に、石田様と家康だけれど・・・
すすっと、着物を踏まないように、大広間の中へと足を踏み入れた。スっとあいている場所に正座をして、柄では無いけれど姿勢を正して、三つ指をついて頭を下げる。
「面を上げよ。」
『・・はい。』
それから、言われて顔を上げた。
やっぱり私の知っている戦国時代の武将達とは確実に違うんだと、感じる
豊臣秀吉といえば、猿と言われてあざ笑われていた、そして織田信長を敬愛していた。でも、ここにその姿はない。
「名はなんという。」
『田沼弥月と申します。』
顔を上げて、はっきりとその人の顔を見れば、覇気があふれる強さを求めた顔だ。
忍さんに聞いた、覇王とはこの事だと思う。
それとは逆に、半兵衛様はニコニコの笑顔で私のところまで来て背に回ると、ポンッと両肩に両手を乗せた。
「秀吉、彼女は言ったとおり三成君が連れてきた。この前の戦にも彼女は出てくれてね。兵士達からも評判がいい。一人一人丁寧に治療してくれて、それに薬草にも詳しい。僕は彼女を正式に豊臣軍に迎え入れたいんだけど、いいかな。」
そして、随分大きく出たと思う。
あまり私を大きく見せないで欲しい。
「半兵衛、その答えは知っているであろう。」
「そういう秀吉、嫌いじゃないけどね。」
なんて、考えていたら笑った半兵衛様がそう言って、秀吉様の元へと歩き出す。
先ほどまで座っていた場所に、二つの木箱がありそれを私の元へと持ってきた。きょとんっとしてしまうが、私の前で、それを開く。
一つ目の細長いほうの木箱には今私が着ている着物よりも、淡いけれど・・・血のような紅色の刃を持つ昔ちらっと洋画で見た剣が入っている。確か・・・レイピアだったかな・・・
それを、半兵衛様は真っ赤な鞘に収め、もう一つも開いた。そこには私の見慣れた黒光りのそれが入っていた
執筆日 20130121
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