想イ輪廻 | ナノ

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何故、私が先陣を切っているのか全く持ってわからない。何が起こるかわからない恐怖と戦っているにもかかわらず・・・

忍さんが用意してくれた馬はまぁ軍馬なんだけど、なんでこんなに早いんでしょうね、しかもかなり振動が容赦ない。

しかもまさかの初めて乗るのに片手運転である。
片手で手綱持たないと何かあったときすぐに銃が使えないから、すぐに撃てるようにしているわけですが…
こんな状態で照準を併せられる自信がない。


「田沼殿、このままスピードを上げますぞ」
『これ、以上はっ!』
「行きますぞ!」
『っ何かあったら訴えるからね!』


グッと手綱をもう一周手首に回して短く持った後、身をかがめて馬の腹を蹴った。

そうすればさらにスピードが上がる。っていうか、とめ方知らないんですけど…いっそ、飛び降りるか。

だんだんと強くなってくる鉄のにおいに、鼻がイカれそうだ・・・。
なんて、考えて爆走していたら、だんだんと人が倒れているのが多くなってくる。のつど・・・散っていった人たちだろう

豊臣も・・・相手の兵も・・・若いのに・・・同じくらいの歳なのに・・・
この戦いで己の未来を喪った人たちだ。

そして、見えた。銀と、黄色。
だけど、その背後には・・・

ギリギリ射程距離だ。

一回、弓道で見たことがある。って言うか実際にやってみろっていわれてやらされたことがある。
見事に外したけど。
その後に何回もやったから5分の1の確立で当たるようになったけど。でも、この馬よりも全然安定していたし、スピードも遅かった。
しかも数年前のこと。上体を起こして、手綱を腰に引っかかるようにくぐり、それを頼りに立ち上がる。
並走していた忍さんがめっちゃ驚いているけど・・・



ライフルをしっかりと構え、そして狙いを定める、少しでも狂えば、当たってしまうかもしれない。

でも、絶対に大丈夫。しっかりと狙いを定めて・・・


『(自分を信じろ、)』


引鉄を引いた、
響いた銃声とともにひるんだ兵士。瞬間はじかれたように石田様がその兵士を斬って、赤くその場に新しい命が散る。


「弥月?!」
『っわ!!』


でも、そんなことを考えていたからか、元々バランス能力も無いのに無理をしてその状態を維持していた私の身体は、とうとう、手綱から放れて地面に放り出される。

けれど、それを支えてくれたのは家康だった。動き早い・・・。


「お前はなんて無茶を・・・っ!」


そして、そういわれてしまった。まぁ、そんなことをしているうちに囲まれているのだが、石田様ともども・・・

カチャン。っと銃弾を変えた。とにかく、もう、私は自分の未来を守らなくちゃいけないんだ。
だったら、精一杯生きてやろうじゃないか・・・


「弥月、お前・・・」
『元々、私は石田様に拾われたんです。そしたら上の道具になるのは当たり前。私は戦います。』


さすがに銃1本じゃそのうちどうしようもなくなるから、後で刀を拾って応戦してみよう。絶対無理だと思うけど。

横から雄たけび。はっとして、構えようとするが間に合わない気がした。けれど家康はすぐに動き、その兵士、そしてその奥に居る兵士と倒していく。

あぁ、そうだ、まだ、この先のことなんて、考えないで、


『(今は、彼等の手伝いさえ、すればいい。)』


いつの間にか忍さんはきえていた。けれど、構わない。

うまく交して、確実にしとめる。一回にこめられるのは2発しかないから乱発はできない。それに、持って来ているものも、元から少ないのだから・・・

いつもの、集中力を・・・確かに持っていれば・・・

動くけれど・・・ターゲットよりもはるかに大きいその的は簡単に、しとめられる。私には、とりえが無いようなものだから

走って、交して、撃って、また飛んで、そして討つ。

止まることなきその連鎖の中に私は足を踏み入れた。
白かったはずの頂いた服はすでに返り血を浴びて赤黒く変色している。
一瞬、グラリっと視界が歪んだけれど、膝をついて体勢を整えて、また撃った。ポケットから、急いで銃弾を出して装填し、そしてまた走り出す。

体力の続く限り、走り続けてみようと、思った。


「弥月後ろだ!!」
『!!』


けれど、家康の言葉に、足を止めてしまった多分、横を通った瞬間に後ろを取られたんだろう。
あぁ、やっぱり、私って駄目だ。

とにかく、交そうと身体をひねり、後ろに倒れる覚悟で銃を撃とうとした、そのとき、身体を支えられて、目の前に白。

銀色が一瞬光ったと思ったらグシャリ、っと目の前で何かが倒れた。倒れた何かは私を襲った兵士だとすぐに分かった、

でも、この人物は・・・?


「・・・勘違いするな。半兵衛様より守るように言われている。」
『・・・石田様・・・』


もぞっと少し動いて顔を上げれば、そこに居たのは冷たい目をしたその人だった。小さく名を言えば体が離され、彼はまた歩いていく。助けてくれた?


「弥月、気を緩めるな!」
『わ、わかってる!』


でも、今はそんなこと考えている暇はなかった。
家康に叫ばれて、また走り出す。

今は、どんなことでも、


「陣を奪い取る。さっさと行くぞ、」


きっと、その言葉が合図だった。
紫の旗を翻す石田軍。


「三成の言うとおり!本陣に攻め入るぞ!」


黄色の旗を掲げる徳川軍。フッと半兵衛さんに言われたことを思い出す。

私だって、今は、まだ認められなくとも・・・ここで、生きていく。
銃口を空に向けた。



ねぇ、世界。コレが、最後。



一発の銃声が空に響く。



私はここで生きていくよ



*-*驚天動地*-*


天下の豊臣軍に、西洋火器を使いこなす「猫」が現れた。
かの者、戦を駆け巡り、恐れを知らぬ。

ただ、戦場を駆け巡る姿は無邪気に獲物を追い回す。
人々は、恐れるだろう。


豊臣はどれほど力を得れば気が済むのだと



(世間をあっと驚かすようなこと。)

 
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