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響くホラ貝の低音が鼓膜を振るわせた。
それは開戦を告げる合図であり、離れたところで雄叫びが上がってこれが現実だと突きつける。戦いが始まったんだろう。さっきまで静かだったのに、今は悲鳴と断末魔、銃声に僅かに金属のぶつかる音が耳に届く。
いままで私が居た世界とは違う。けれどこれがここでは普通なんだ・・・。
『(頑張らなくちゃ・・・全部。)』
これから私が進むのは非情の道で間違いない…暖かい、陽だまりを信じていたら…いつかは足を掬われてしまうかもしれない。
生きるためには受け入れて、そして従う。今私が生きるためにはこの道しかない
「お願いします!」
「田沼殿!」
『今行きます!』
ここからは私の戦が始まる。ひとつひとつ大切な命を私が助けると決めた。名前を呼ばれて、走り出す。
どれぐらいの時間がたったのだろう。
突然背後に人が降ってきて、思わずもっていた血濡れのタオルを落としてしまった。
しかも、立ち上がった瞬間に膝をつく形で現れるものだからのけぞってしまうのは、本当に唐突だったからだ。
私のそばにいたほかの人間だって驚いている。
いや、どんな状況だって空から人が降ってきたら驚くに決まっているかもしれないが
「伝令いたす。田沼殿に、竹中様より出撃命令。」
告げられた言葉に、固まってしまった。
『…出撃…?』
「第2部隊へ混ざれとのこと。出撃した後、騎乗により第2部隊の援護と」
「そこまでは某がついていかせていただきます。」とそう言葉を続けられて唇をかみしめてしまう。
なるべくは出さないと、そうはいっていたが、戦況が悪いわけではないだろうが、その命が下ったということは何か理由があるに違いない。
『わかり・・・ました・・・。』
といっても…私は馬には乗ったことは無い。頑張らなければ振り落とされてしまうかもしれない。そこは頑張らなければ。
身をひるがえし、必要の無いものをすべてかばんの中に戻した。それから、ライフルを背に担いで、息を吐く。
『(大丈夫…)』
半兵衛様が言ったじゃないか…自分の未来を守る為に、相手の未来を奪うんだって…
「田沼殿」
『は、はい。』
でも、怖いと思うのは、仕方が無いよね・・・?
執筆日 20130116
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