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あの戦から幾日かたち、肩はしっかり検査してもらった。
徳川家康と石田三成にはあれ以来会っていない。
若干、幽閉されている感じがしなくも無いが…衣食住があるだけましだと思う。私が知っている戦国時代ではけれど、得体のしれない私をおいてもらえるだけありがたい。でも…また、戦が始まる…らしい。…というのは偶然通りかかった忍さんから聞いた話だ…。声かけたら凄く驚かれた。で、まぁ、薬草にも詳しいってことでたくさん摘んできてもらっている。お願いして調合とかの道具を揃えてもらえたし、いい人なんだろう。
まぁ、軍医候補って言うのが、強いんだろうな…この時代、蘭学がまだまだ浸透していないし。
「弥月君。」
そういえば、秀吉様にはまだ会っていないなぁ…。
なんて考えて…そのときだ、何の前触れもなく障子が開いて、読んでいた私の時代の本をバンッと思いっきり閉じてしまった。
慌てて振り変えれば不思議そうにしている半兵衛様の姿。その手には風呂敷があった。かなりミスマッチなその組み合わせに数度まばたきをしてしまったのは仕方がないのか。
「何してたの?」
『…蘭学です。』
「勉強熱心なのはいいけど、キミの時間をもらえるかな。」
『え…』
考えていたら半兵衛さんがそう言って、私のそばまで来て、その風呂敷を広げる。
そこにあったのは、白に紫色のラインの入ったワイシャツと長いブーツカットのようなデザインのズボン。それから、ブーツのような靴。いやパッと見はブーツなのだが…なぜ?と彼を見ればにこりと微笑まれた。
「来たときも南蛮様式みたいな服を着ていたから…とりあえず取り寄せて、動きやすいようにはしてみたよ。」
それよりも、どうしてその動きやすいような服を私の前に持ってくるのかが分からない。半兵衛様を見たけれど、膝においていた私の手を彼は取った。
「もちろんキミを、戦に出す気は無いよ。本当はキミがかなりの腕前だって言うことは分かるけどね。」
彼の指先が手の中の数ヵ所を撫でる。自分では慣れてしまったのだが、実際女の手にまずないものができてしまっていて、それをたった一回の握手で見つけたというのは、彼の鋭さだ。
「これは、銃ダコだよね。普通、ただの軍医の手には無いものだ。それに、戦にでたことがないという女の手にもね。」
私の手には、この今の日本には特定の人にしかないような、それがある。軍師と言われる半兵衛様がそれに気がつかないわけが無い。
彼を思ったよりも甘く見ていた。
執筆日 20130115
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