恋連鎖 | ナノ
それからというもの、本当に銀ちゃんの言った通り当然のように勝ってしまった。
他のペアは上手い人たちがいたからーという理由でギリギリという感じだったのだけれど、あたしたちの目の前にいるのはそれとは全然桁違いっだった。
「お妙さんと新婚生活が待っているんだスマッシュ!!!!」
「ぐはぁっ!」
ってな感じで1点。
「先生と○○○よサーブ!!!!」
「きゃあぁっ!!」
見たいな感じで瞬殺。
「この場にお妙がいなくてよかったなー」
「先生、俺の目の前の奴が今にも近藤さんに殴りかかりにいきそうなんですけど」
「ほっとけほっとけ」
腑抜けた声でそう言い放つけれど、銀ちゃんはさっちゃんさんにあそこまでネタにされてどうしてそうのうのうといられるのだろうか。
…クラスのみんながもう当り前の光景みたいに見てるのはもう分かり切った事だけど。
そんな風にチラリと目だけを向けると、銀ちゃんも一瞬だけあたしと目を合わせて「大丈夫だって」と言いかけるように薄く微笑んだ。
―――!
不意打ちなんて知らないよコノヤロー!
「さ、38対0で3Zの勝利…」
「「おっしゃぁぁあ!!」」
あそこの台の審判が妙に青ざめながら得点表を言うと、さっちゃんさんと近藤さんは大きくハイタッチをした。
前半戦であの得点って…ある意味あの二人のペアって相性良くないですか?なんて思う。
対する3-Aの二人がお互いを慰めあっていた光景がとても痛々しかった。
「先っ生―――! 私の愛のサーブ、見ていただけましたか―――!!」
「ちょ、うるさい。まだ他の所の試合が終わってねェんだから黙れ」
「あぁ、その突き放したような態度最高ですっ」
「ホラ言わんこっちゃねェだろ?」
「あはは……」
銀ちゃんが嫌そうな顔を向けてくると、またもや総悟が後ろで口笛を吹いていた。
「あれ、お妙さんは?」
「お妙ちゃんなら最初からここにはいない。残念だな」
「なっ――――!」
どんっと床に重いものが落とされるような音がしたから見てみると近藤さんが砂になりかけていた。
その目の前には勝ち誇ったように清々しい九ちゃんの顔が…
―――近藤さんドンマイ
でもいたらいたできっと面倒だっただろうなぁ…
「結ちゃんっ」
「はい!?」
すると突然近藤さんがガバッと起き上がってあたしの方へ寄って来た。
「もう俺には君しかいないんだぁぁ――――!!」
「えぇぇぇっ!?」
抱きつかれるまであと2秒
と言ったところで、あたしの後ろにいたトシと総悟が瞬時に立ちあがると二人仲好く近藤さんの背中に重いキックをクリンヒットさせて、近藤さんは向こうへとすっ飛んでいってしまった。
思わず3Z集団からは拍手が巻き起こる。
「大丈夫か結」
「え、あ…うん」
「全く、もうちょっと反射神経を鍛えなせェ」
「ごめんなさい…」
あれ、何で謝ってるんだろう。
と考えている半面、なんだか二人の王子様に守られているお姫様になった気分になった。
って、イカンイカン。
「結ちゃんすまない、僕がアイツを殺っとかなかったせいで…」
「九ちゃん漢字漢字」
とりあえず貴方は責任を感じなくていいよ。そんな風に内心思うのでした。