恋連鎖 | ナノ
「おーおー殺気立ってるねェ」
結と九兵衛の後ろからにょきっと顔を出して呟くは銀八。
「先生!」
「もとい、俺は今日に限っては生徒任せだからね。勝利を狙うのみな訳よ」
そしてそのまま結の隣に腰かけた。
「そしてナチュラルに結の隣を占拠しねェでくだせェ」
今度は総悟が結を後ろからガバッと抱きしめると銀八を軽く睨みつける。結は呑気に「あ、総悟おはよー」と挨拶をした。
「おはよー」
「そしてお前もナチュラルに抱きついてんじゃねぇよ」
バシンと総悟の脳天に手刀をかました土方は、そのまま九兵衛の後ろに胡坐をかいた。
「痛てて…」と頭を押さえつつも総悟は結の後ろに腰かける。
そこの集団を見てか、3Zの連中はそこに集まるようになって、試合間近になると立派な塊となる。
目の前ではいまだ激しく猿飛・近藤ペアがダブルスだがシングル同士で打ち合っていた。
「銀ちゃ…じゃなくて先生。」
「ん、何?」
「もしかしてさっちゃんさんと近藤さんに何か言いましたか…?」
いけないいけない。“銀ちゃん”って思わず言っちゃいそうになったよ。
「いや別に…多分俺じゃなくてコイツじゃねェかな…」
「へ?」
引き攣った表情を浮かべながら銀ちゃんはあたしの後ろにいる総悟を指差す。彼は呑気にアイマスクを被って口笛を吹いていた。(っていうかそんな風にするんだったら教室で寝てればいいのになぁ…)
「また何でですか」
そう返事をすると
「俺が頼んだんだよ。とりあえず今日優勝できるようにクラスメイトの士気を高めとけって。
……コイツに頼んだ俺がバカだった。ぜってー後で面倒臭いことが勃発するぞ」
「あはは…」
まだ何も起こっていないと言うのに銀ちゃんには先が見えているのか、すっかりぐったりとした疲れ切った表情になってしまってあたしも思わず苦笑いをした。
と同時に、次に自分は一体何を言われるんだろうかとひどく不安になったのだ。
「安心しなせェ、結に変なことは言ったりしねぇから」
「だから総悟エスパー!?」
「そうだったらいいなー。そしたら結を…」
「あれ、その台詞どっかで聞いたことあるよ」
アイマスクを外すと「始まるみてーなんで」と視線を向こうに向ける。
…いまだ凄まじいオーラと殺気立った二人が相手に向かって眼を飛ばしていた。
あーあビビってるよ……。
「これより、3-A vs 3-Zの試合を始めます!」
球技大会幹部の人だかがそう叫ぶと「よろしくお願いします」とけたたましい声が柔道場いっぱいに響いた。
「勝つかなー」
「勝つだろアレ」
ワクワクして呟いたら銀ちゃんに当然のように突っ込まれてしまった。