恋連鎖 | ナノ


困った国語だけないんだけど。
教科書を確認しつつ気付いた真実に、お財布をまずチェック。買い忘れてたのだろう。いくらくらいかな…と、とりあえず副教材の存在の可能性を視野に入れ、2000円を抜き出して封筒に入れた。


さて、今日はあたしの銀魂高校初登校日である。




ようやく着いた教室は、扉が完全に閉まっているものも騒がしい事がよく伝わった。

先に教員室へ行って銀八先生に挨拶をする。昨日今日あったばかりだけれども、やはり第一印象通りカッコいい人だ。ちょっとドキドキしちゃう。


しかし、それよりも今は新クラスのメンバーがどういう人なのか、仲良くしていけるだろうかと言う、期待と不安の入り混じった不気味な感情でドキドキしてる。

それにしても、よく考えたら、このクラスの人たちも今日初めて同じクラスになったんだよね。それにしては仲良くなるの早いや。
……いや、Z組なんて特別枠に入れられてるのだから、きっと何か理由でもあるのかもしれない。例えば1年の時からずっと同じメンバーとか。

だとしたらさらにあたしはその輪の中にうまく入り込めることができるのだろうか?と悶々としてきた。
ううう……

「そう固くなんなって。問題児ばっかだが、俺の生徒たちは割といい奴らだぜ」

「ふぇ…」

あ、変な声でた。

「結ちゃんならすぐ仲良くなれるから。なんなら俺がいるし?」
「へ、へ!?」

教室に入らず、手をかけていた扉に背を預けて先生はあたしと向き合う形になった。
もしかして緊張してたのバレバレだったんじゃ…絶対そうだ。あぁ!情けない!

「対等にいこうや。俺も元々教師ってガラじゃねーんだ。」
「そうですか…」
「おぅ。ま、とりあえず肩の力は抜いてけ。変に緊張した方がアイツらは遠慮しちまうから」

―――……

その言葉にようやく大きな荷物が外れるように肩が軽くなった。
不思議と、スッと力が抜けたのが手に取るように分かった。すごいやこの人。

「ありがとうございます」

大したお礼はできないから笑顔を浮かべて返す。先生も嬉しそうに笑って、ようやく扉を開いた。


「おーいテメェら。とっくにチャイム鳴ってんの気付けよー」


気だるい声が教室に響いた。
すっと生徒たちの声が引いて、教師として生徒から支持を集められている凄い人なんじゃないか、と結は感心した。

教室に足を入れると生徒たちから一斉に視線が送られ、シンとした教室がざわつき始めた。
おおぅ、転校生って緊張するのねー……ふぅ。


「ハーイ注目。見てのとおり、今日は転校生が来てるんで。
…挨拶よろしくな結ちゃん」


先生の隣に立ち、ばれないように深呼吸をした。

「園江、結です。今日からこの学校に通うことになりました。…どうぞ、よろしくお願いします。」

とても要約された紹介文だけど、我ながら、声が震えずよくできた挨拶だと思う。
先ほど、銀八先生が緊張をほぐしてくれたおかげだろう。人仕事を終えたような気持になってスッキリすると、安心感から体が熱くなった。

けれど、今度はまたすっと教室が静かになって、自分の心臓の音がやけに大きく聞こえるのは気のせいじゃないだろう。隣の銀八先生に聞こえて内心馬鹿にされていないだろうか、なんて冷や汗をかきそうになる。


「じゃー結ちゃんの席はそこ。
右後ろの方とか左後ろとか空いてるけど気にしないで。休んでるだけだから」

「…わかりました。」


―新学期早々休みって…。

インフルでも流行ってたっけ?と思いつつも、なるべく普通に指定された席へ向かう。

ちらりと空いている席の方を見ると、その隣…つまり、自分の座る席の後ろの席の男子と目が合った。



茶髪というかクリームというか…そうだ、亜麻色だ。綺麗な色をした髪の、なかなかの美少年である。
目何かパッチリして、少し面倒くさそうにジトっとしている感じが、あたしくらいの年代では受けそうな容姿で、勿論あたしも彼の容姿にはまってしまう。

制服の着崩し具合から、少しチャラい?と思った。よし、お前は今からプチチャラ男君かっこ仮だ。(やっぱ第一印象は大事だね)


しばらくあたしと目が合って、驚いたように頬杖を崩す。あ、なんかごめんなさい。


けれどもすぐに元に戻って、今度は


「もしかして一目惚れしましたかィ?」


瞬間、プチチャラ男君かっこ仮はニヤリと口元に笑みを浮かべて話しかけてきた。
 
「はい?」


「………。だってこっち見てたじゃないですかィ。」 

「いやでも」

「まあいいでさァ。俺は沖田総悟。よろしくな」
「は、はい」

また少し騒がしくなった教室の中、沖田君、は「さっさと座りなせェ」とあたしを誘導した。

「そう固くならなくていいんじゃねーか?クラスメイトだろィ」
「そ、そうです……いやそうだね」
「そうそう。やればできるじゃねーか」

―――あれ、意外と爽やかな感じ…?


「もし困ったことがあったら俺にすぐ言いなせェ。真っ先にその様をデジカメで撮ってやりまさァ」


―――…いや、ドSだ。

「絶対に言わない」
「別にいいけど?なんなら俺が嫌がらせしてそのままカメラ回すだけだし」
「結局いじめられなきゃいけないの!?」


…それにしてもイケメンだなぁ。
少しドS発言に引いた事は置いておいて、あたしは今猛烈にドキドキしている。表情には…出さないようにしてるけど。あれ、出てる?出てない?


「オイ総悟、転校生に変な事吹き込むな。困ってんじゃねェか」

「は?」

沖田君が怪訝そうに眉をひそめてあたしの左隣を見る。
つられてあたしも本人に目を向けてみると…うわあああかっこいいい、何、教師含めてもう3人目なんですけど、かっこいいんだけど。


「かっこつけんじゃねーや。そうやって女に媚売ってはどうせ捨てるんだろィ。いいかィ結、こいつは土方十四郎っつー相当の女好きで、実は根っからのMな…」
「勝手な事吹き込むんじゃねェェェェ!! 違ェからな、こいつが言ってんのはデタラメだからな!」
「何必死になってるんでィ。真実か、真実だから隠したがるのか。……なーるほど…」

うわ、悪い顔。

「仲がいいん…だ、ね(?)幼馴染とか?」

とりあえずなだめようと思って仲介となり言い合いを阻止しよう。
そう試みて言ってみたはいいものも、沖田君はこちらを向くと、まるで見下すかのような視線で

「俺はこいつをいつか殺そうと抹殺計画立ててんだ。仲が良いわけねェだろ」

「す、すみませんんんんん」

結論、すっごく怖かったです。


HR中だと言うのに、あたしたちが騒ぐものだから教室の音量が4つくらい上がった。
また再開する沖田君と土方君の言い合いにもう手がつけられない…。

ふと銀八先生の方を見ると、紫髪の女子生徒から迫られて困っているように見えた。

…なるほど、こりゃ困ったクラスだ。




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