恋連鎖 | ナノ


何だろうこの感覚。ああ、そうだ。土を掘り起こす感覚に似ている。

「……11年前…ですか?」

その数字…いや、正しくは、今の年齢マイナス11の計算をして、その結果の先にある年齢から、どこか自分の胸の奥で引っかかった。

「なんで、あたしが小1の頃からの携帯番号を知ってるんですか……」

ストーカーなんですか?そうなんですか?…っていうかやっぱり個人情報を使用していた可能性もある。
でなければ電話番号がアッサリとばれるとは限らない。
でもこの人は確かに、「そんな事は面倒くさい」と行動を否定したのだ。

不安に似た何かが心を支配する。



高杉先生は携帯を取り出して操作する。そしてあたしの目の前に、電話帳に登録されたあたしの名前を見せつければ言った。


「どうやったらこの情報を手に入れられると思うか?」


その登録されたあたしの電話番号の下に、住所や郵便番号について書かれている所を見て目を見開いた。

違う、これ、今のあたしの住所じゃあない。

当然、この場であたしの小学校の頃住んでいた場所を知る人はあたし意外には母親くらいしかいないはずだ。当の本人であるあたしですら忘れてしまっていたその文字の羅列に、心拍数は上昇。
どうやったら手に入れられるかって?そんなの、あたしの母親に聞くか、もしくはその時代のあたしと赤外線通信をするかのどちらかだ。

先生から携帯を受け取って他の情報も見る。
今あたしが自分のプロフィールに書いてある事よりも詳しく個人情報が載っているそれに不思議な感じがしてならない。


「………」

「俺はな、11年前のお前の事をよく知ってんだよ」

「…なん、で…ですか……?」

携帯から視線を外し、高杉先生を見上げる。


「その頃、お前の記憶にはねェかもしれねーが、お前の父親と俺の母親は再婚した。勿論俺たちは血なんぞ繋がってないが―――」




「……お兄ちゃん……?」






信じられなくて、でもその事を確認したらどばっと水があふれたように記憶がよみがえってくる。
確かにあった。あたしは、この人と小さい頃過ごした思い出がある。頭が少し痛くなった。あまりの情報量の多さにパンク寸前なのかもしれない。
あたしはそれほど、この人と一緒に過ごしていた時期が長かったようだ。

じゃあどうして会った時に話してくれなかったのだろう。高杉先生は、ずっと先生を他人だと思っていたあたしを見て、何も感じなかったのだろうか。


「…ごめんなさい」


ただ謝罪の言葉しか出ない。でもその代わり、目の前のこの人が兄であったことにひどく安堵が生じた。
あたしの家族が、こんなところにいただなんて思いもしなかったから混乱しそうだ。でも、それ以上に嬉しくて仕方ない。


「突然で悪いな。少し休むか」

「はい」

高杉先生はあたしの頭をポンと軽く叩いた。
さっきも同じ行動をしてくれたけれども、あたしの感じた暖かさとは別の、もっと柔らかい何かが胸の奥でじんわりと広がった。
そんな気がした。




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