恋連鎖 | ナノ



手伝ってもらうようになってから幾分かペースが早まった薬品の並べ替え、棚の薬品の総入れ替えと言った方が正しいかもしれない。静かにカチャカチャとガラスが交差する音だけが響く。
人の少ない校舎からは、部活動で勤しむ運動部の声だけが心地よく流れて聞こえてきた。青春だ。

最後の一つを指定された所に置けば

「終わりですか?」

ため息と同時に尋ねてみる。



「まだ」

「えええぇ!!?」

「あと3箱はあるぜ?ックク…やっぱり病み上がりは辛ェのか?」
「ぐっ……」


何故だろう、ここで「辛い」と言ったら負けな気がした。
そのため結は「そんなこと…ありません」と高杉に対抗してみる。少しだけ無理をしている結を見て気付いたのか、高杉はもう一度喉を鳴らした。


「…かれこれ1時間か…。」

「も、少しだけ休みませんか?? 何ならあたし、飲み物買ってきますから!」

「駄目だ。もし運動部で怪我人が出たらどうするつもりだ?テメェ…」
「すみませんすみませんっ今すぐ取り掛かりますからァァァ!!!」


少し凄んだだけでもこれだ。早速箱に手を付けた結を見たら、高杉は変なものを見るような目で結を眺め、ため息をついた。まあいいか。

また薬品を並べる音だけが響いて、昼近い保健室にはついでに夏独特の生温かい風が流れ込んできた。
もう座ってコーヒーを飲みくつろぐ高杉は、結が働いているにもかかわらず白衣を脱いで腕をまくった。どうやら6月近いからと言って白衣は暑かったらしい。
椅子に白衣をかけて腕を机の上に放り出せば大きく欠伸をした。



「……あ」



すると結が何かを思い出したかのように呟いた。

声に反応して瞳を開ける高杉。案の定、結は自分に何か言いたいようだ。



「そういえば、なんであたしの連絡知ってたんでしょうか…?」

個人情報を見ていないという事は、高杉先生の携帯から直接あたしの携帯にかかって来たって事……ですよね?


「………」


コト。また一つ薬品を置く音で高杉はもう一度目を閉じた。


「もしかして銀ちゃんから、聞きましたか…?」

「いや」

「え、じゃあ何で…」



「11年前から変わってなかったから驚いたぜ俺は」



妙にリアルな数字に、結の動きが止まった。





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