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大事件である。

『俺も…もう随分と前からミョウジの事が好きだ』

煉獄先生と、キスをしました。今までで一番の距離の近さで私に微笑んでくれた煉獄先生の表情は、カッコ良すぎて鼻血が吹き出してしまうかと心配になった。でももしかしたらただの自分の願望から来る記憶操作かもしれないと思い直して「もう一度今の言葉言ってください」と先生に伝えたら「君が好きだ」と何度も耳元で囁いてくれた。そのまま一気に煉獄先生の胸の中へと飛び込み、嬉しさから込み上げた涙を堪えては幸せを噛み締めた。

「とても大事に思っている、ミョウジの事を」

穏やかな口調で、私を力強く抱き締めてくれた煉獄先生の発言に、より一層胸が苦しくなって結局ワンワンと馬鹿みたいに泣いた。煉獄先生に出逢って一年と少し。遂に教師と生徒という垣根を超えて交わったこの想いを、私は今後も大切にしていきたいと思っている。



「あ、ナマエ!煉獄先生何の用事だっ…あれ。どうしたんだ、その顔」

煉獄先生とあの一連の流れがあって数分後。私は良い意味で上の空だった。ふらふらと千鳥足で廊下を歩く私の背後から爽やかな炭治郎の声が聞こえてきて踵を返しそこに振り返る。夢のような出来事があったんです。煉獄先生に好きだと言って貰えたんです。とは、流石に炭治郎にも言えないので「どうもしないよ!」と上擦った声で返事を返した。

「そうか。なら良いんだが…匂いがいつもよりホワホワしてるし、きっと良い事があったんだな!」

炭治郎は鼻が効く。出逢った当初から何度も見破られてきた自分の想いに恥ずかしくなってしまう程に。お弁当を持ってくるのを忘れた日、友達と喧嘩をして凹んでいた日など、それは様々なシーンで炭治郎に見破られてはその度に適度な距離で私を励ましてくれたり一緒に喜んでくれたりした。その能力は今日も健在みたいで、頬を真っ赤に染めて目が泳いでいる私の肩を前から掴んで嬉しそうに微笑んでくれる優しい炭治郎。明確な答えは流石に教える事は出来ないけれど、その分嬉しさだけは伝えたいと思って「うん!」と元気よく笑顔で返事を返した。

「たーんじろっ!」

「わっ!ナマエ、急に突進してくるなよ…!」

「へへ!」

自分より少し前を歩く炭治郎の背中に、伊之助ではないが猪突猛進で突っ込んだ。そのままグリグリと頭を左右に揺らして攻撃を仕掛ける。炭治郎は少し呆れた表情で「やけにテンションが高いな」と呟いて顔だけ私に向けてくれた。目が合った瞬間、ニヘラと頬を緩めて満面の笑みで炭治郎に一言添えた。

「いつもありがとう!」

素直な想いを口にした私に炭治郎は目を細めてとても穏やかに微笑んでくれた。ふと横に視線を逸らして窓の向こう側に見えたそこは、やけに神秘的な景色に見えた。そよそよと風に揺れる枯葉でさえも今の私にはとても美しく、そしてキラキラとして見えて、さっきまでとは打って変わって見違える程の風景に、恋するパワーって凄いなぁと、一人そんな事を考えていた。




「あの演奏はないよねぇ」

「全員顔は良いのにねぇ」

中庭に配置してあるベンチに腰掛けて、ついさっき購入した焼きそばをズルズルと啜っていた私の目の前を、青白い顔をした他校の女子生徒2人が横切って行った。頬に手を添えて心底残念そうに想いを口にする2人の姿を横目で追いながらも「あ、やっぱりね」と心の中で呟く。あれから穏やかに時が過ぎて今日はキメ学祭。煉獄先生と想いが通じ合って初めて過ごす文化祭である。いつもならシンとしがちな中庭も、今日に限ってはあちらこちらにわんさかと人が密集していた。そんな中体育館で開催されている軽音部主催のイベントに参加していたであろう、ハイカラバンカラデモクラシーの演奏に対して嘆きの声を挙げている人たちがちらほら。どうやら今年も安定して評判は悪かったようだ。

「お前、冨岡並にぼっちだなァ」

「し、不死川先生…!」

最後の一口をゴクン!と飲み込んで直ぐに、背後から聞こえてきた不死川先生の声に肩が竦んだ。「友達とかいねェのかよォ」とか何とか言いながらも何故か不死川先生は私の横に腰を降ろして胡座をかくかのように片足を組んだ。そのまま自分の膝に頬杖をついてじぃっと穴が空く程私を見つめてくる。

「友達いますよ!梅ちゃんとか」

「あんな性根の腐った女が友達とか…付き合う相手はちゃんと選べよォ、お前」

「不死川先生こそ冨岡先生とそろそろ仲良くしてあげてくださいよ。お陰でいつもぼっちご飯してるじゃないですか、冨岡先生」

「ありゃ俺だけじゃねェ。あいつは万遍なく皆んなから嫌われてる」

まぁ、煉獄だけは例外だがなァ。そう言って不死川先生は腕を組んで不満げに舌を鳴らした。流石私の愛する人。分け隔てなく皆んなと付き合ってるだなんて、未来の妻としてはとても誇らしい。得意げに、うんうんと2度頷いて口の端を上げる私に不死川先生は「で?」と一言、謎の相槌を打った。

「で?…とは?」

「すっとボケてんじゃねェ。お前…遂にあれだろォ。煉獄とくっついたんだろォ」

「…………えっ!?」

何で分かるの!?そう心の中で激しく叫んでそこに勢いよく立ち上がった。パクパクと金魚のように口を動かしている私に不死川先生は至極呆れた表情で下から私の顔を見上げた。不死川先生の切長の瞳が「分かりやすい奴」と言っている。ま、まずい…煉獄先生の名誉を守る為にもここは全力で誤魔化しておかなければ!

「も、もぉー!不死川先生ったら…何言ってんですか全く!」

「…………」

「き、教師と生徒がくっつくなんて…そんな80年代のドラマじゃないんですからぁ!あああある訳ないじゃないですか!そんな事!」

「何歳だよ、お前」

不自然だ。誰がどう見ても。あれ、私ってこんなにも嘘をつくのが下手だったのか。とか何とかかんとか心の中で自分にツッコミを入れていると、不死川先生は超冷静にご最もな発言を私に吐いた。明らかに目が泳いでいる私を無視してそこに立ち上がった不死川先生は気怠そうに小首を傾げて「せいぜい卒業するまでは周りにバレねぇようにしろよ」と私の額を人差し指でピン!と軽く弾いた。

「煉獄も相当浮かれてやがったからなァ。お前等バカみたいに素直だし見てて分かりやすい」

「俺がどうかしたか!」

「!?れ、煉獄先生…!」

話題も話題なだけに、突然の煉獄先生の登場に心の底から驚いてしまった。目力の強いギョロギョロとした煉獄先生の瞳に曇りは一切ない。私と不死川先生の間に割って入るように真ん中に位置を留めた煉獄先生は「うむ、近いな!」と口にして真っ直ぐと私達2人を見つめた。相変わらず微妙に何処を見ているのかは不明だけれど、清々しいその発言と煉獄先生らしい明るいテンションが可愛くて自然と笑みが溢れた。

「んじゃまァ、俺は行くわ」

「えっ、何か私に用事でもあったから声を掛けてくれたんじゃないんですか?」

「ねェわ。ただ暇だっただけだァ」

「不死川、正門に彼女が来ていたぞ!さっき何故か声を掛けられた!」

「あァ?」

何でお前が知ってんだよ。そうとでも言いたげな表情で眉を寄せた不死川先生に「仲良くな!」と煉獄先生が的外れな返事を返す。なるほど、不死川先生は彼女さんが来るまでの暇な待ち時間を潰す為に私に声を掛けてきたのかと妙に納得をした。「リア充ですね!」と笑顔で手を振れば、最後に物凄く不機嫌そうに舌打ちをされて、そのまま無言でこの場を去って行った不死川先生の背中を見つめていた。意味もなくある一点を見つめていた私の左側からやけに強い視線を感じて振り向くと、そこにはとても穏やかな表情で私を見つめる煉獄先生がいた。目が合った瞬間、目尻を下げて微笑んでくれた煉獄先生に顔が熱くなってくる。私の事が好きだと伝えてくれたあの日の煉獄先生の表情と言葉が一気に脳裏に過ったからだ。

「せ、先生…」

「なんだ」

「こ、此処…学校ですよ」

「あぁ、そうだったな」

前から私の髪を掬って、王子様のように自分の口元に当てた煉獄先生の行動に心臓はバカみたいに跳ね上がっていく。そうだなと口では相槌をうってくれるけれど、何の悪びれもなくそこに瞼を伏せて愛しそうに私の髪に唇を寄せる煉獄先生に良い意味で胸が苦しくなった。この人は何処まで私をドキドキさせるんだろう。幸い、たまたま今は人も捌けて中庭には誰も居ないからセーフだけれど、こんな所を誰かに見られたら大問題だ。そんな事を考える傍らに顔を上げた煉獄先生とバチっと目が合った。ただ視線が重なっただけなのにまるで先生に吸い込まれてしまうかのような錯覚に陥ってしまう。

「そ、そういえば…!文化祭初日の今日は後夜祭がありますね!」

何とか冷静さを保とうと一歩後ろに退いた私に、煉獄先生は目を細めて「あぁ、あるな」と笑顔で返事を返してくれた。「良かったら一緒に教室で花火でも見ませんか!」とその場の思いつきで提案をした私に煉獄先生は快く承諾をしてくれた。キメ学祭初日は毎年決まって花火が上がるのが恒例だ。今年の夏は残念ながら先生と2人で花火大会には行けなかったから、その想いを埋めるかのように提案をしてみたのだが勇気を出して良かったなと内心ホッとした。

「でさぁー、そいつがさぁ…!」

少し離れた場所でガヤガヤと騒がしい大勢の学生の群れが此方にやって来るのを発見して即座に先生との距離を更に広げた。そのまま煉獄先生に大きく手を振って「約束ですよ!」と最後に言い残し、その場を去る。興奮冷め止まぬまま意味もなく体育館に足を運ぶと、観客は0なのに得意げに演奏をかましているハイカラバンカラデモクラシーの曲がやけに鼓膜に響いた。何故俺に彼女は出来ないのだと、ただの恨みでしかない善逸作詞の曲を音痴な炭治郎が気持ち良さそうに歌っている。ある意味勇気あるなと呆れ気味にその姿を眺めていると、突如横に登場した冨岡先生が去年同様頬に涙を流して曲に魅入っているようだった。「お前もあのバンドの良さが分かるのか」と声を掛けられたけれど「全く分かりません!」と秒で答えたのは最早必然の流れとしか言いようがない。



「綺麗ー…!」

日も暮れて、1人真っ暗な教室の中でグラウンドに灯る火を眺めていた。後夜祭が開始して約1時間。キメ学生達がゾロゾロと集まる中、グラウンドの真ん中に設置されたファイヤーストームに目が釘付けになっていた。パチパチと派手な音を立てて夜空に立ち登る火の行方をキラキラと目を輝かせて見つめていた私の背後からガラっと教室のドアが開く。踵を返して振り返ると「遅れてすまない!」と笑顔で此方に近付いてくる大好きな煉獄先生の顔を見た瞬間、毎度の事ながらキュウと胸が締め付けられた。

「いえ、時間ピッタリです!」

「そうか、ならば良かった!」

「多分私が思うにあと5分後ぐらいには花火も上がると思います!」

「うむ、楽しみだな!」

「はいっ!」

本当に心の底から嬉しそうに笑った煉獄先生に、私もつられるようにそこに笑みを零した。お行儀悪く机の上に腰掛けている私を心配して「危ないぞ」と煉獄先生が小さく注意を促しながらも私との距離を縮めてくる。あっという間に至近距離まで迫ってきた煉獄先生の端正な顔が直ぐ目の前にやってきて、思わず床に視線を落としてしまった。理由は勿論、ただただ先生がカッコ良くて直視出来ないからだ。

「先生、近いです…」

「……………」

「ど、ドキドキしちゃいます…」

「……………」

机に腰掛けている私を前から塞ぐように、机に両手をついて至近距離でじぃっと見つめてくる煉獄先生にドキドキ度が増していく。下手に動けば唇が重なり合ってしまうかもしれない。先生は何処か確信犯的に私を真っ直ぐと捉えて、ふっと小さく笑った。そのまま片方の腕を伸ばして優しく私の左頬を撫でる。もう何度もその手に触れられているけれど一向に慣れそうにない。それは良い意味で、先生に対する想いが都度止まらなくなってしまうからだ。

「余り俺を煽らないでくれ」

「…………え?」

「理性が効かなくなる」

煉獄先生と想いが通じ合って約半月。この間、私の煉獄先生に対する想いは増していくばかりだった。好きだと言ってくれた、大事に想っていると伝えてくれた。甘い雰囲気を身に纏って微笑んでくれる煉獄先生に磁石のように毎日惹かれていく。それは最早必然のように感じていた。初めは遠くから眺めているだけで充分だったのに、もう今では欲が膨らんで加速する想いが止まらない。先生の頬に両手をそっと添えて涙目で見上げる私に、先生は眉を下げて困ったようにして笑っていた。

「もう少しで花火、…!」

さりげなく話題を変えようとしてくれた先生の頬をぐいっと自分の方に引き寄せて、チュっと控えめに唇を重ねた。ゆっくりと顔を離して見上げた煉獄先生の表情はまるで予想してなかった、とでも言いたそうな顔だ。パチパチと2度瞬きを繰り返して、目を丸くしたまま私を見つめてくる先生に頬を綻ばせた。こういう、少しあどけない表情も何もかも私のツボをついてくる先生が可愛すぎてある意味困りものだ。

「……ミョウジ、」

「はい…」

「今のは君が悪いぞ」

「え?」

ガタン!と机が揺れる音が教室内に響いた。気付けば煉獄先生の大きな腕の中に包まれていて、そのまま一気に重ね合わさった唇から先生の暖かい体温と柔らかい感触が鮮明に広がっていく。

「んっ…!」

徐々に横抱きにされて、何度も何度も優しく唇を啄まれた。チュ、チュ、と水音を立てて私の髪を撫でる先生の手の動きがやたらと気持ちが良くて次第に頭の中がボーっとしてくる。おでこ、鼻、頬に耳朶、それぞれ優しく唇を寄せてくれる煉獄先生のキスに目がトロンとしてきて、薄目で煉獄先生を見つめていると「その顔はズルいな」と先生は笑った。

ドォオオオン…!

その時、遠くで花火の打ち上がった音が聞こえた。鮮やかな色を放って、夜空に輝く花火に照らされた煉獄先生の顔がようやくはっきりと見えた。紅くて大きな瞳、骨張った男らしい腕、まるで炎のような特徴的な髪型に低い声。そのどれもこれもが自分に向けられているのだと思うと幸せ以外の言葉がまるで当て嵌まらなかった。

「よし、花火見るか」

「…………はい」

「うむ、やはり3階から見る花火は絶景だな!」

横抱きにされていた私の体制を整えて、今度は机じゃなく椅子に座らせてくれた煉獄先生の大きな腕がゆっくりと離れていく。そのまま隣に寄り添うようにして机に少し体重を預けている煉獄先生の横顔を下からじっと見つめていた。花火を見ようと提案をしたのは自分の方なのに、先生こっち向かないかなとかそんな事を1人考える。結局私はただ煉獄先生と2人で過ごしたかっただけなのだとようやくそこで気付いた。それにしても何か物足りない。もっと好きにしてくれてもいいのになとか、思春期満載な事を思い描いている私に気付いた煉獄先生と視線が合った。ただ目が合っただけなのに、ドキドキしてしまうその理由はきっと相手が煉獄先生だからだ。

「見ないのか?花火」

「見ますよ。見ます…けど、」

「……………」

それ以上にまだ、先生とくっ付いていたいんです。そう口に仕掛けてぐっと口を噤んだ。こんな邪な想いを口して先生に嫌われてしまったらどうしようと頭に過ったからだ。床に視線を落としている私の前に、ある一つの影が重なる。人の気配を感じてふと視線を引き上げると、腰を落として私と同じ目線まで下げてくれた煉獄先生が微笑んでいた。そのまま私の手をギュっと握って「君は俺をその気にさせるのが上手いな」と先生は小さな声で呟く。

「好きです…」

「俺も好きだ」

「いや、絶対私の方が先生の事好きです」

「それは残念だったな。その気持ちは俺の方が上だ」

そこまで言葉を交わして、最後に2人して笑い合った。互いに気持ちを伝え合うその後ろで、花火がドォオオオン!と大きく打ち上がる。少し季節外れの花火がやけに切なく思えたのは、今こうして先生と2人で過ごす僅かな時間でさえも惜しいと感じたからだろうか。そんな事を脳裏で考えていると、前から伸びてきた煉獄先生にぐいっと顔を引き寄せられてそのまま一気に2人の距離が縮まった。至近距離で小さく微笑んでくれた煉獄先生の頬に両手を添えて、無言で端正な顔を見つめていると、それに気付いた先生の顔が角度を変えてそっと私にキスを落としてくれた。徐々に甘くなっていくその動作に、またしても何処か遠くに気をやっていると、耳元に唇を寄せていた煉獄先生が独り言のように囁いた。

「花火は、また来年共にじっくりと見よう」

今はキスに集中しろ。そうとでも言わんばかりに次の瞬間、先生の甘いキスが頭上から降ってきて、幸せすぎて思わず涙が溢れ出そうになってしまった。2人だけの教室内に響く水音に、背中に伝う先生の手の温もり。キスなんて先生と以外した事なんてなかったけれど、回数を重ねる程に好きという想いが何重にも重なっていくものなのだと、それだけはハッキリと分かってきた。徐々に身体の力が抜け落ちてきた私の腰を支えて、最後に名残惜しそうにゆっくりと唇を離した煉獄先生と目が合う。目の前に佇んでいる先生の事が堪らなく愛しくて好きすぎてもうどうしようもなかった。

「先生…!好きっ!」

飼い主にじゃれる犬のように、煉獄先生の胸の中に飛び込んだ瞬間、ガラっ!と教室のドアが開いて一気に現実に戻った。恐る恐る顔だけ後ろに振り返ると、そこに居たのは不死川先生と例の美人な彼女さんの2人が居て「ヒィっ!」とバカみたいな声をあげてしまった。不死川先生はジトっと冷ややかな視線を此方に向けて、怒気を含んだ声で叫ぶ。

「てめェ等…イチャつくんなら他所でやれェ!」

ちょっと!声デカいよ実弥!そう言って慌てて止めに入ってくれた彼女さんが最早神に見えた。てんやわんやと1人焦っている私の後ろで、煉獄先生は声を大にして愉快に笑っている。な、何て呑気な人なんだろうか…でも可愛い!好き!と再び不死川先生を無視して煉獄先生に抱きつこうとしたその行動をズカズカと距離を縮めてきた不死川先生に首根っこを掴まれてひょいっと後ろに投げ飛ばされてしまった。ちっと密かに舌打ちをした私に、彼女さんはクスクスと楽しそうに笑っている。それにつられるように私も一緒くたになって笑った。遠くで花火が派手な音を立てて夜空に高く打ち上がる。たまたま視線を流した花火の形がハート型で「先生!あれ、今の私の気持ちです!」と嬉々とした表情で指差す私に、煉獄先生はとても嬉しそうに笑っていた。



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